税理士が教える税金講座!【第3回】フリーランスにとって重要な収入と必要経費について

税金・申請

こんにちは、税理士の竹村直樹です。

第2回では、フリーランスを始める際に必要な開業届や青色申告などについてご説明しました。

第3回ではフリーランスの事業で発生する売上や経費についてご説明したいと思います。

それでは早速確認してみましょう。

なお、ここでは、フリーランスの定義を中小企業庁が発行している『2017年小規模企業白書』で示された「特定の組織に属さず、常時従業員を雇用しておらず、事業者本人が技術や技能を提供することで成り立つ事業を営んでおり、自らが営んでいる事業が「フリーランス」であると認識している事業者」とします。

1.収入金額


まずは収入金額から解説します。
収入金額とはいわゆる売上金額のことです。
金額を取り決めたうえで発注先から仕事を受け、納品をするというのが一般的な流れだと思いますが、いつ、いくら、計上すべきでしょうか?


【例題】
10月に100万円の仕事を受注し、11月に中間金50万円を受領し、12月に納品を行い、残金を翌年1月に手数料10%(10万円)を控除された40万円が入金された場合を考えてみます。さて、この場合には、いつ、いくらで収入金額を計上すべきでしょうか?


(1)計上時期 ~いつ計上すべきか~

フリーランスの仕事の受け方として多い請負や、業務委託契約の場合、所得税法では収入金額として計上すべき時期については次のように処理することとされています。

§売上の計上時期

①成果物を完成して納品した日。
②作業の請負の場合には完了した日
③報酬を期間の経過等に応じて収入する特約などがある場合におけるその期間の経過等に対応する報酬については、その特約などによりその収入すべき事由が生じた日

例えば、データ入力サービス業をしていたとした場合には、次のように業務の形態により異なります。

自宅などでの事務所でデータ入力作業を行い、CDROM等を納品する場合には、①に該当し、納品した日が収入金額として計上すべき日となります。

相手先の会社などでデータ入力を行う場合には、②に該当し、完了した日が収入金額として計上すべき日となります。

データ入力サービスなどを年間契約で結び、月額料金や支払日などを定めている場合などでは、③に該当し、その定めた支払日が収入金額として計上すべき日となります。

ここで重要なのが、収入金額を計上する時期には、いずれの場合においても“実際の現金が入金されたかについては関係ない”ということです。

冒頭の例題の場合は、納品した12月に売上を計上します。

所得税の計算は暦年で行うため、10月の計上でも11月の計上でも原則問題ありませんが、年をまたぐ場合などでは注意が必要です。

たとえば12月中に納品が終わっていて請求書を翌年の1月に発行している場合は、納品の完了している12月に売上を計上する必要があります。

また、税務調査があった場合にも前年の売上なのか、翌年の売上なのかについては必ず確認する項目です。

(2)計上金額 ~いくら計上すべきか~

次にいくら計上すべきか、について考えてみます。
計上する金額としては、手数料等を差引かれて入金される場合であっても、総額が収入金額となります(差引かれた手数料は支払手数料として必要経費に計上します)。
冒頭の例題で次のような支払明細書があった場合には、いくらを計上すべきでしょうか。

<支払明細書>
発注金額  1,000,000円
手数料    100,000円
支払金額   900,000円

この場合には発注金額(フリーランス側から見た受注金額)である100万円で売上金額を計上します。手数料10万円は必要経費として計上します。

結果的には差引90万円が利益となりますが、青色申告の要件である簿記の原則として総額で表示するルールとなっています。
また消費税の納税義務の判定では、売上金額(課税売上高)は消費税の納税義務の判定の要素であるため、注意が必要です。

2.必要経費


フリーランスの経費として計上できる範囲は、その事業収入を得るために発生した費用です。
具体的には、商品販売業であれば物を販売するための仕入原価、お店の家賃、従業員の給料などです。

(1)どこまでが必要経費の範囲になるのか

個人が支出する費用のうち必要経費の範囲は次のようにまとめられます。

§個人の支出する費用の内訳と必要経費算入の可否

項目 内容 必要経費算入
①家事費 生活費 算入できない
②所得税等、罰金等 所得税、住民税、延滞金・罰金等
③家事関連費 事業・家事共用費用 一部算入できる
④事業経費 ①売上原価

②収入金額を得るために直接要した費用

③販売費、一般管理費その他業務上の費用

算入できる

それぞれについて解説します。

①家事費

家事費とは生活費のことで生活上発生する、水道光熱費、医療費、税金、保険料などです。
これらの費用が事業所得の経費にならないことは、当然と考えることができるでしょう。

②所得税等、罰金等

税金のうち、所得税や住民税は必要経費に算入されないこととされています。
また、罰金や延滞金も算入されません。これらの支出が経費にならないことは感覚的に納得できると思います。
一方、事業税や消費税は必要経費に算入されます。

③家事関連費

家事関連費とは、生活費と事業経費が混在しているような費用です。具体的には自宅兼事務所の家賃、光熱費などが該当します。

この費用については青色申告と白色申告で必要経費にできる範囲が異なります。
青色申告は、白色申告と比較して必要経費にできる範囲が広くなっています。

具体的にはそれぞれ次のようになります。

ア.白色申告の場合

白色申告の場合は、家事関連費が次の2つの要件を満たしている場合に、経費に算入することができます。

①   家事関連費の主たる部分が営業活動上必要である。

② その必要である部分を明らかに区分することができる場合

イ.青色申告の場合

青色申告の場合、次の要件に該当する金額について必要経費に算入することができます。

①取引の記録等に基づいて営業活動上上直接必要であったことが明らかにされる部分

実務上は、通達により、白色申告においても、事業に必要な部分の金額が50%以下であっても明らかに区分することができる場合には、その部分を必要経費に算入することができるとされています。

ウ.具体的な区分方法

それではどのように区分すればよいのでしょうか。

・家賃、固定資産税、火災保険料など

事務所兼自宅の家賃や固定資産税や火災保険料などは部屋の面積で按分したりします。

家賃、固定資産税、火災保険料)×事務所として使用している部屋の面積/全体の床面積
・通信料、インターネット利用料など

電話料金、インターネット利用料などこれらの費用については区分方法が困難ですが、例えば作業時間で分けることも可能だと思います。

(通信料、インターネット利用料金)×作業時間/利用時間

この方法なら絶対という按分方法はありませんが、第三者から見て納得できそうな割合で行う必要があります。

④事業経費

事業経費は事業を行う上で必要な費用で、次の3つに区分することができます。

ア.売上原価

商品販売業などの仕入原価に該当する部分です。

イ.収入金額を得るために直接要した費用

フリーランスの場合には、受注先の現場までの交通費や納品するための郵送料などが該当すると考えられます。

ウ.販売費・一般管理費等

業務について生じた一般的な費用のことです。例えば事務所の家賃、電気代などです。
なお、この経費の中に減価償却費という経費があります。
減価償却費とは一定額以上の資産を購入した場合、定められた期間で按分して経費として計上する経費です。
例えば車を購入した場合には、取得価額を定められた期間(法定耐用年数)で按分して経費に計上します。
青色申告の場合には30万円未満、白色申告の場合には10万円未満の固定資産は、業務のように供したの必要経費として全額計上することができます。
もっとも、フリーランスの場合には、30万円以上の高額な固定資産を購入することは少ないと思われます。

⑤フリーランスの場合の必要経費の範囲

フリーランスの場合、業務上の経費として、事業経費のア.の『売上原価』とイ.の『収入金額を得るために直接要した費用』についてはあまり該当するものがないと思います。理由としては、経費の範囲が、『直接要した費用』であり、スキルの提供を業務とするフリーランスには、なじまないためです。

一方、③の家事関連費や事業経費のうちのウ.の販売費・管理費については、発生することがイメージしやすいでしょう。特に自宅で仕事をしているフリーランスの方は、その中でも③の家事関連費が発生することが多いのではないでしょうか。

(2)経費を計上すべき時期

次に経費をいつ計上すべきか時期について確認してみましょう。

減価償却費以外の経費の計上すべき時期は、次のすべての要件が成立した時とされています。

§必要経費の計上時期

(1) その年12月31日までに当該費用に係る債務が成立していること。
(2) その年12月31日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3) その年12月31日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。

計上時期が問題になるのは、今年の12月の経費か翌年の経費かという、年をまたぐ場合です。

先に料金を支払っていても、サ-ビスの提供が翌年以降の場合には、今年の経費として計上できません。また支払いが翌年1月以降であっても、購入して引き渡しを受けている場合には経費として計上できます。

例えば、必要な事務用品などを12月に購入し、12月中に到着してすでに使用しているが、クレジットカードの引き落としが翌年1月の場合でも、12月の必要経費として計上できます。

反対に、火災保険料などのような期間対応する経費を12月中に翌年1年分を前払いしていても、支払時の経費として計上できません。

3.費用を必要経費として計上するための準備

(1) 領収書を忘れずに保管しておく

支出した費用を必要経費として計上するためには、支払いの際に領収書をもらうようにしましょう。また、領収書には相手先の名称、日付、金額、内容が記載されているか確認しましょう。
宛名は屋号でも名前でも構いませんが、いわゆる「上様領収書」は避けましょう。

また、領収書が発行されない場合には、内容がわかるような書類(請求書・納品書)で確認しましょう。これらの書類は保存義務がありますので、ファイルに閉じたりスクラップブックに張ったりして保管しましょう。なお、領収書や請求書を紙による保管ではなくスキャナにより取り込んだデータで保存する場合には、別途申請する必要があります。

(2)領収書も請求書もないような場合

お祝い金や香典のように領収書も請求書もない支払いについては案内状やお礼状に金額を記入しておきましょう。

また、スイカやイコカなどの交通系ICカードで支払った場合には、チャージした際領収書を印字して保存しましょう。

現金で購入した自動販売機の代金などは何も残りませんですが、帳簿に支払った内容を記帳し、それが事業に必要な経費であれば問題ないでしょう。

具体的に業務で必要であるかの判定は個々に行いますが、個別具体的な内容についての説明ができるようにしておくことが重要だと考えます。

まとめ

今回は収入金額と必要経費について解説しました。

必要経費については、当初のイメージより経費として算入できる金額が少ないと思われた方がいるかもしれません。
フリーランスの場合には、従業員を雇わず、一人で仕事をすることが多いため経費の範囲が限られてくると思います。

経費の計上時期は現金の支出時期とは必ずしも一致しませんが、最終的に現金が支出することには変わりありません。
経費が多ければ税金が減らせることになりますが、それ以上に現金が減少することになります。

そのためポイントとしては無駄遣いをなくし、必要な経費を計上漏れしないように領収書の収集保管に気を配りましょう。

第4回ではフリーランスの確定申告における注意点について解説いたします。

 

<税理士が教える税金講座!全6回>

【第1回】フリーランス(個人事業主)とサラリーマンの税務上の違いや手取り金額比較について

【第2回】節税にもなる!?フリーランスを始める際に必要な開業届や青色申告について

【第3回】フリーランスにとって重要な収入と必要経費について

【第4回】フリーランスが確定申告を行うにあたって注意すべきこと

【第5回】フリーランスが納めるべき所得税以外の税金の種類について

【第6回】フリーランスは法人化すべき?メリット・デメリットや法人の税金について

 


◆この記事の著者紹介
税理士 竹村 直樹(たけむら なおき)
税理士法人 髙柳総合会計事務所
https://www.takayanagi-sogo.com/
2009年 税理士登録
税理士法人 髙柳総合会計事務所の所属税理士として中小企業の決算・税務相談、会社代表者の相続・事業承継対策を中心に業務に携わる。
(社)ファルクラム租税法研究会研究員、(社)アコード租税総合研究所会員。
〔主な著書等〕
「墓地など嫌悪施設の存在により土地評価額に影響が生じる場合」税経通信72巻14号税務経理協会(2017)ほか。
共著
『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント-所得税裁判事例精選20-』(酒井克彦編著・監修、2018第一法規)


 

※具体的な処理や手続きにつきましては、最寄りの税務署又は税理士にお尋ねください。
本記事により発生したいかなる損失も執筆者及び株式会社クラウドワークス並びに税理士法人高柳総合会計事務所は責任を負いません。

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