税理士が教える税金講座!【第2回】節税にもなる!?フリーランスを始める際に必要な開業届や青色申告について

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こんにちは。税理士の竹村直樹です。

前回はフリーランスとサラリーマンの税金の計算の違いについて説明しました。

詳しくはこちら⇒ 税理士が教える税金講座!【第1回】フリーランス(個人事業主)とサラリーマンの税務上の違いや手取り金額比較について

第2回目は、実際にフリーランスとして始めるにあたって提出しておいたほうがいい届出書や申請書について説明したいと思います。

それでは早速確認してみましょう。

※なお、ここでは、フリーランスの定義を中小企業庁が発行している『2017年小規模企業白書』で示された「特定の組織に属さず、常時従業員を雇用しておらず、事業者本人が技術や技能を提供することで成り立つ事業を営んでおり、自らが営んでいる事業が「フリーランス」であると認識している事業者」とします。

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目次

必要な届出書の種類 ~どのような届出書等があるか


実際どのような届出書があるのでしょうか?

フリーランスとして仕事を始めていくにあたって、税務署に各種の届出書や申請書を提出する必要があります。
国税庁のホームページでは各種示されていますが、主な届出書等は以下のとおりです。

<主な届出書等の種類>
・事業開始届出書
・所得税の青色申告承認申請書
・青色事業専従者給与に関する届出
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

上記のうち、今回は、フリーランスとして最低限提出しておくべき届出書提出しておいたほうがいい申請書である個人事業の開業・廃業等届出書』所得税の青色申告承認申請書』について解説したいと思います。

1.個人事業の開業・廃業等届出書について

(1)個人事業の開業・廃業等届出書とは

『個人事業の開業・廃業等届出書』とはいわゆる開業届出書といわれているものの正式名称です。
以下、『開業届出書』で統一します。

フリーランスをはじめ、個人事業を開始する人は、この『開業届出書』を提出する必要があります。

>> 用紙は国税庁ホームページからダウンロードできます。

(2)開業届出書の提出と記載内容 ~何を書いてどこに提出するか~

①記載内容
届出書に書くべき内容は住所、氏名、始める業種などを記入します。
所得の種類は事業所得をチェックします。また個人番号(マイナンバー)も記載する必要があります。

屋号とは・・・
個人事業の場合、社名というものがないため、必要に応じて屋号をつける必要があります。
屋号とは簡単にいうとお店の名前です。例えば複数の飲食店を経営している会社の正式な社名は○○商事として個々のお店は居酒屋〇〇とか、カフェレストラン〇〇などとつけるようなものです。
個人でいえば個人経営されている美容院にヘアーサロン〇〇とつけたりします。

 

②提出先
この届出書は納税地の所轄税務署に提出することになっています。
届出書に記載した納税地がどの所轄税務署になるかについては国税庁のホームページで調べることができます。

所轄税務署とは
多くの場合は、複数の市町村につき1つの税務署があります。
例えば、東京の東村山税務署は西東京市、東村山市、小平市、清瀬市、東久留米市をカバーしています。
都市部などでは一市町村に複数の税務署があります。
例えば神奈川県横浜市には中税務署、緑税務署、戸塚税務署、南税務署、鶴見税務署、保土ヶ谷税務署の6つの税務署があります。
例外的に東京都渋谷区には、大都市にも関わらず、渋谷税務署1つしかありません。

納税地は通常、住所地となりますので自宅の住所を記載しましょう。
事業所などがある人は、住所地等に代えてその事業所などの所在地を納税地にすることができます。レンタルオフィスでもOKです。

ただし、事務所の場所を納税地とする場合には別途届出書が必要です。また、移転した場合も、納税地の変更届出書を提出する必要があります。
通常のフリーランスの方は自宅を納税地とすることが一般的でしょう。
提出先は税務署のみで市役所などには提出しません。
飲食店が保健所に届け出るなどのように、始めるにあたって届け出が必須な業種については、監督する役所に別途書類を提出する必要があるかと思います。

③提出方法 ~持参、郵送、e-Tax~
提出先と合わせて、提出方法についてもご紹介しておきます。
税務署へ届出書等を提出する方法は、書面を直接持参する方法郵送する方法e-Taxにより提出する方法があります。
このうち、持参する方法と郵送する場合には2部作成し1部を控えとして保管しておきましょう。

個人番号の記載のある書類をe-Tax以外の方法で提出する場合には、本人確認として個人番号が確認できる書類と身元確認ができる書類を提示(添付)する必要があります。
個人番号を確認する書類としては通知カードのコピーが、本人確認書類としては運転免許証などのコピーが必要となります。
なお、マイナンバーカード(写真付個人番号番号カード)を作成している場合にはこのマイナンバーカードのコピーのみで十分です。

e-Taxの場合には本人確認は自動的に行われるのでこれらの書類は不要です。
フリーランスとして、毎年確定申告書を提出するような場合などでは、e-Taxが便利ですので早めに登録しましょう。
また、e-Taxを利用する際には、マイナンバーカードが必要となりますので、早めにマイナンバーカードを作成することをおすすめします。

マイナンバーカードの作成は、全国では、まだ12%程度(平成30年12月1日現在)ですが、今後必要性が増すと思われます。
なお、マイナンバーカードの作成はお住まいの各市区町村で行います。
また2020年から後述の青色申告特別控除を最大限に受けるためには、電子申告により申告を行うことが要件となっています。

④提出する時期
開業届出書の提出期限は事業の開始の日から1ヵ月以内とされています。

それでは、事業を開始した日はどのようにして決まるのでしょうか?

法令上の決まりはなく、所得税の計算ではこの事業を開始した日が特に問題になることはありません。
ただし、消費税の計算では非常に重要な日となります。実際にこの事業開始の日について争われた事例があります。
詳しい内容は割愛しますが、その事例では、事業を開始した日を「新たに事業を行うにあたり必要な準備行為を行った日」と解されています。

そのため実際に業務を請け負った日ではなく、準備期間も事業を開始していることになります。
例えば新たに名刺を作成したりすることも事業行為になりますので、フリーランスとして実際に何か行動を始めた日を事業開始の日とするとよいでしょう。

~具体的な日はいつからがいいのか?~
所得税の計算は1月1日から12月31日の暦年を計算単位の期間(課税期間)としています。

所得税においては事業開始の日については神経質になる必要はありませんが、消費税においては、新年から事業を開始しようと年末から準備していた場合などでは事業開始した課税期間が前年なのか今年なのか定かでなくなり、前出の消費税の事例のとおりトラブルになる可能性があります。そのため年末年始をまたぐようになる事業開始日の設定は避けましょう

特に消費税の還付を受けようとする場合などでは注意が必要です(消費税については次回以降解説予定)。
その場合には、事前に税理士に相談しましょう。

~遅れた場合は…
この開業届出書は開始の日から1ヵ月以内に提出することとされています。
もし遅れてしまっても罰則はありませんが、気がついた時点で早めに提出しましょう。

2.青色承認申請書の提出

(1)青色申告承認申請書とは

次に青色申告承認申請書について解説します。

開業届出書は提出が義務付けられていますが、青色申告承認申請書の提出は、青色申告により申告をする場合にその申請をするための書類です。
したがって青色申告を選択するかしないは任意ですが、選択することをおすすめします
理由は、青色申告には税制上の特典があり、節税効果が高いからです。この節税効果は所得が増えるほど高くなります。

節税効果の説明は後ほどおこなうとして、まず青色申告制度の内容を解説します。

(2)青色申告とは

青色申告とは事業所得、不動産所得、山林所得がある人が適用を受けることができる制度です。

フリーランスの方は、前回の説明のとおり事業所得がある方になりますので、対象となります。
そして青色申告者は、その申告を正規の簿記の原則(複式簿記)に従って記帳し、年末に損益計算書と貸借対照表を作成する必要があります。また領収書などの書類について最大7年間の保存義務があります。
保存すべき書類と保存期間は以下のとおり5年間と7年間の違いがありますが、全ての書類を7年間保存しておけば大丈夫でしょう。

§保存すべき書類と保存期間

保存が必要なもの保存期間
帳簿 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、
売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など
7年
書類 決算関係書類 損益計算書、貸借対照表、
棚卸表など
7年
現金預金取引等関係書類 領収証、小切手控、
預金通帳、借用証など
7年(前々年分所得が300万円以下の方は、5年)
その他の書類
取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類
(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など)
5年

※国税庁HPより

ここで青色申告制度を選択するにあたり、最大の課題は、正規の簿記の原則(複式簿記)により記帳することだと思います。
経理や簿記の知識のある方にとってみれば簡単なことですが、全く知識がない方にはちょっと難しいかもしれません。

しかし現在では、様々な会計ソフトが市販されており、また簿記の知識がない方でも記帳できるようなシステムが開発されています。
具体的には、現金出納帳や入出金伝票を記入することにより、自動で損益計算書や貸借対照表が作成できます。

また最近では、クラウド会計において、銀行口座と連携してデータを自動で取込んだり、スマートフォンから入力できたりするシステムもあります。
したがって簿記の知識がなくても青色申告を行うことは可能です。

前出の損益計算書と貸借対照表は、まとめて決算書という書類で提出します。この用紙も国税庁のHPからダウンロードできます。

ここで注意したいのが、青色申告決算書の種類です。
青色申告決算書には「一般用」と「現金主義用」がありますが、青色申告制度の特典を最大限に受ける場合には「一般用」で記載する必要があります。

(3)青色承認申請書の記載事項と提出先、提出期限

<1>記載事項
青色承認申請書に納税地、氏名の他に青色申告にあたって記帳する帳簿を選択することになっていますが、フリーランスの方は、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳、経費帳、売上帳があれば十分でしょう。
会計ソフトを利用して記帳する場合にはこれらの帳簿は入力すれば自動的に作成されます。
<2>提出期限
提出先は先ほどの開業届出書と同様に所轄の税務署となります。
新規に事業を開始した場合の提出期限は、次のとおり事業を開始した時期により異なります。

§青色申告承認申請書の提出期限

原則青色申告の承認を受けようとする年の3月15日
1月16日以後に新規に業務を開始した場合事業を開始した日から2か月以内

この事業を開始した日とは、さきほどの開業届出書に記載した日と同様です。
提出する際は、開業届出書と一緒に提出しましょう。

(4)青色申告は取り消されることも ~どんな時に取り消されるのか~

青色申告制度は承認を受ける制度です。
承認が却下されることもありますし、取り消されることもあります。それでは、どのようなときに取り消されるのでしょうか?

国税庁では、個人の青色申告の承認の取消しについて、事務運営指針として公表していますがそこでは次のものが掲げられています。

§青色申告が取り消される理由

  1. 帳簿書類を提示しない場合
  2. 税務署長の指示に従わない場合
  3. 隠ぺい、仮装等の場合

 
普通に申告するのであればまず問題ないでしょう。

却下される場合についても仮装隠蔽がある場合や、過去に青色申告が取り消されてから1年以内の場合などです。
新規にフリーランスとして開業される方が却下された事例は聞いたことがありませんので問題ないでしょう。

(5)承認の決定通知はどのようにされるのか

青色申告承認申請書の承認等の通知は、通常、却下される場合のみ書面により通知されます
青色申告の適用を受けようとする年の12月31日までに何も通知がない場合には承認があったとみなされます。

(6)青色申告要件

青色申告を行うための要件をまとめると下記のとおりです。

§青色申告の要件

  1. 青色申告承認申請書を期日までに提出すること。
  2. 複式簿記の原則にもとづいて記帳し、損益計算書、貸借対照表を作成すること。
  3. 書類を保存すること。

(7)青色申告・白色申告のメリット・デメリット

青色申告・白色申告のメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。

§青色申告メリット・デメリット

 青色申告白色申告
メリット・特典あり・事前申請なし
・帳簿の記帳が比較的簡便
デメリット・事前申請が必要
・帳簿の記載が煩雑
・提出書類が多くなる
・特典がない

(8)青色申告の節税効果

個人事業主の青色申告の主な特典として具体的には以下のものがあります。
<1>青色申告特別控除
青色申告特別控除とは年間に発生した事業所得から最高65万円を控除できる制度です

§青色申告者の事業所得

事業所得=収入金額-必要経費-青色申告特別控除

なお、最大65万円の控除を受けるには次の要件が必要です。

① 青色申告者であること
② 複式簿記により帳簿に記帳し、それに基づいて損益計算書、貸借対照表を作成していること
③ 損益計算書、貸借対照表を確定申告書に添付し期限内に提出していること

※ 2020年分の確定申告からは、65万円の控除を受けるためには上記の3要件以外に電子申告によることが必要となります。

<2>純損失の繰越しと繰戻し
事業所得に損失(赤字)の金額がある場合で、他の所得と損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額(純損失の金額)が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除します
また、前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰越しではなく、その損失額を生じた年の前年の所得から控除して、前年分の所得税の還付を受けることもできます。
<3>青色事業専従者給与
青色申告者の15歳以上の家族従業員に支払った給与は、事前に提出された届出書に記載された金額の範囲内で適正な金額であれば、必要経費に算入することができます。
この制度の適用を受けるには「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。

白色専従者の場合には「事業専従者控除」という制度がありますが、金額に大幅に制限され配偶者の場合最大86万円、その他の者は50万円です(青色専従者給与の場合は金額の制限はありません)。
<4>その他
家事関連費について青色申告者は記録に基づいて按分して経費に計上できるのに対し白色申告者は必要な部分が50%を超える場合のみ経費に計上できるとされています。
具体的には私用分の費用と事業に関する部分がある場合に白色申告者はその割合が50%を超えていないと経費として計上できません。具体的な計算例は次回に解説します。
<5>青色申告まとめ
以上の制度は青色申告者にだけ認められている制度です。

特に青色申告特別控除は現金の支出のない控除であるため非常に節税効果が高いと考えられます。
また所得税は所得が上がるにつれて上がった部分について高い税率が適用される制度(超過累進税率)であるため、所得が高くなるほど節税効果が高くなります(税率表は第1回目を参照)。
例えば青色申告特別控除前の所得金額が400万円の節税効果は13万円であるのに対し1,000万円の場合の節税効果は214,500円となります。

3.白色申告とは


最後に白色申告について解説します。

一般に白色申告とは青色申告以外ことを指し、青色申告を選択しなければ自動的に白色申告ということになります。
法令上、白色申告という言葉はありませんが、国税庁のホームページでも使用されています。白色申告は青色申告との対比でいわれていると思われます。

フリーランスの場合の白色申告者は確定申告の際に収支内訳書の添付が必要となります。
白色申告においても簡易な帳簿の記載が必要であり、書類等の保存も義務付けられています。

§保存すべき書類と保存期間

保存が必要なもの保存期間
帳簿 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)7年
業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿)5年
書類 決算に関して作成した棚卸表その他の書類5年
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類5年

※国税庁HPより

まとめ

今回は事業開始に当たって提出すべき書類と青色申告制度の概要ついて解説しました。

青色申告は白色申告に比べて手間がかかりますが、節税メリットがあり、その節税メリットは所得金額が高くなるほど効果を発揮します。
フリーランスとして事業始められるにあたっては、青色申告制度を選択することをおすすめします。

第3回はフリーランスの収入金額・必要経費について解説します。


※具体的な処理や手続きにつきましては、最寄りの税務署又は税理士にお尋ねください。
本記事により発生したいかなる損失も執筆者及び株式会社クラウドワークス並びに税理士法人高柳総合会計事務所は責任を負いません。

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この記事を書いた人

竹村直樹のアバター 竹村直樹 税理士

2009年 税理士登録
税理士法人 髙柳総合会計事務所の所属税理士として中小企業の決算・税務相談、会社代表者の相続・事業承継対策を中心に業務に携わる。
(社)ファルクラム租税法研究会研究員、(社)アコード租税総合研究所会員。

【主な著書等】
「墓地など嫌悪施設の存在により土地評価額に影響が生じる場合」税経通信72巻14号税務経理協会(2017)ほか。
共著
『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント-所得税裁判事例精選20-』(酒井克彦編著・監修、2018第一法規)

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