税理士が教える税金講座!【第6回】フリーランスは法人化すべき?メリット・デメリットや法人の税金について

税金・申請

こんにちは、税理士の竹村直樹です。

第5回ではフリーランスが納めるべき所得税以外の税金の種類について解説しました。

最終回の第6回ではフリーランスから法人へ組織変更すべきかについて解説したいと思います。
それでは早速確認してみましょう。

なお、ここでは、フリーランスの定義を中小企業庁が発行している『2017年小規模企業白書』で示された「特定の組織に属さず、常時従業員を雇用しておらず、事業者本人が技術や技能を提供することで成り立つ事業を営んでおり、自らが営んでいる事業が「フリーランス」であると認識している事業者」とします。

1.法人成りとは

フリーランスなど個人事業者を営んでいた者が法人(会社)を設立して個人で行っていた事業を法人で行うことを「法人成り(法人化)」と言います。

(1)会社設立について

会社を設立する際に必要なものの一つとして「出資」が挙げられます。
現在は最低資本金制度が廃止されているため、資本金(出資)は1円から設立できますが、設立に関する諸費用が30万円程度発生します。

「1円からでも会社設立できる」などというキャッチフレーズを目にされたことも多いかと思いますが、実際には、ある程度の資金を資本金として確保してから会社を設立するほうが良いと思います。

法人化による法人の設立に当たっては、通常ご自身が株主となって会社を設立し、取締役(社長)に就任することになります。
株主、役員の数については制限がないため、すべて一人で行うことが可能です。

(2)法人と個人の関係

法人は独自に権利義務の主体となることのできる組織です。したがって個人とは別の存在となり、契約も法人が行うことになります。
銀行口座なども個人とは別に開設する必要があり、法人のお金と個人のお金とは明確に区別する必要があります

具体的には、法人化をした場合、今まで個人の収入と経費していたものはすべて法人の収益・費用として認識されます。
個人は法人から役員報酬という形で現金の支給を受けることになります。

この役員報酬は法人の費用となり、役員個人にとっては給与所得となります。
法人にとっては、売上から役員報酬を含めた費用を差し引いたものが会社の利益となります。
そして、法人は、この利益を基礎に税額計算を行い、法人税等を納めることになります。

一方、個人は役員報酬が給与所得になります。
給与が一定の金額以下であれば年末調整を行います。
他の所得がなければ確定申告は不要となります。発生する税金は所得税と住民税です。

(3)法人の税金について

法人の税金には、法人税、法人事業税、法人市民税、消費税などがあります。

法人税の計算は、会社の利益に一定金額の調整した所得金額に税率を掛け、税額を算定します。
一定の調整とは、税金の計算上費用にならない項目を加算したり、収益にならないものを減算したりすることを指します。
具体的には、交際費の一部を利益に加算したり、配当金の一部を利益から減算したりします。

法人事業税については法人税の所得金額を基礎とした金額に税率を掛けて計算します。
法人住民税は法人税に税率をかけたもの(法人税割)と会社の規模により発生する均等割があります。
均等割は最低7万円かかります。この均等割は赤字でも納める義務があります。

(4)社会保険について

社会保険については、個人事業者の場合には、国民年金と国民健康保険に加入することになります。

法人化により役員報酬を受け取る場合には、年金については厚生年金に加入し、健康保険については協会けんぽに加入することになります。
この厚生年金保険料と、協会けんぽ保険料は給与の額に連動し、個人と法人で折半することになっています。

2.法人化とフリーランスのメリット・デメリット

法人化、フリーランスの場合のメリット・デメリットはさまざまなものがあり、一概に言えませんが、主なものをまとめると以下のとおりとなります。

(1)フリーランスから法人化のメリット

①給与所得控除が使える

法人化した場合、個人は役員報酬として現金を受けることになります。この役員報酬は給与所得となり、収入金額から支出の伴わない給与所得控除が控除された後の金額が課税の対象となります。(【第1回】フリーランス(個人事業主)とサラリーマンの税務上の違いや手取り金額比較について

②社宅制度が使える

フリーランスの方が賃貸住宅を借りた場合、家賃は家事費となり必要経費に算入できません。

一方、法人が社宅として借り上げ、社宅として住む場合、法人が負担する家賃について一定金額までは給与として課税されません。
借りる住居の面積等により法人の負担限度額に上限がありますが、最低、家賃の半額以下の範囲を会社が負担した場合には、その負担額は会社の経費となり、かつ、個人について所得税は課税されません。

国税庁HP ⇒ 役員に社宅などを貸したとき

③赤字を10年間繰り越せる

青色申告事業者であるフリーランスの方が事業で赤字が発生した場合、その赤字は3年間繰り越すことが可能ですが、法人の場合には10年間繰り越すことができます。

④退職金を受け取ることができる

フリーランスの場合、廃業しても退職金はありませんが、法人で役員を辞任した場合には退職金を支給することができます。
この場合、通常の金額であれば全額費用として計上できます。受け取る個人は退職所得として課税されます。

勤続年数によりますが、課税の対象とされる金額は退職金の支給総額の半分以下となり、大変節税効果が高くなります。

⑤配偶者に給与を支給することができる

青色事業者であるフリーランスの場合、生計を一にする配偶者などへ給与を支払うためには事前に申請が必要であり、また給与を受ける配偶者などは事業に専従する必要があります。
【第2回】節税にもなる!?フリーランスを始める際に必要な開業届や青色申告について

法人の場合には、通常の範囲内の金額であれば給与として支給することが可能です。
そのため法人の領収書の整理や、請求書の発行などを配偶者の方に手伝ってもらい、社会相場並みの金額であれば支給額を費用として計上することが可能です。

また、本人の所得金額が、1,000万円以下である場合には、配偶者控除を受けることが可能です。

そのため代表者となるフリ-ランスの方の所得金額が1,000万円以下であり、受け取る配偶者の所得金額が38万円以下であれば配偶者控除を、38万円超123万円以下であれば配偶者特別控除を受けることが可能です。

一方フリーランスの方が、青色事業専従者給与を支払っている場合には、金額にかかわらず配偶者控除、配偶者特別控除の適用を受けることはできません。

⑥決算期を自由に決められる

フリーランスの場合、1月から12月の暦年の期間で計算し、翌年3月15日までに確定申告を行う必要があります。

一方、法人の場合には、決算月を任意に定めることができます。
そのため事業が繁忙期でない月を決算月として設定することができます。
これにより、事務作業の分散と決算予測がしやすくなります。

⑦納税義務が2年間延長できる

消費税の納税義務の判定は前々年の売上(基準期間の課税売上高)で行います。法人成した場合、会社設立後2年間は、基準期間の課税売上高がないため資本金が1,000万円未満の法人で一定の要件を満たせば、納税義務が免除されます。

(2)フリーランスから法人化のデメリット

①毎月自由に使えるお金が固定化される

法人化した場合には、個人は給与として現金を受け取ることになります。
この役員報酬は決められた時期にその事業年度の役員報酬を定めなければなりません。

臨時的に会社から金銭を受け取ることもできますが、この場合には、役員賞与となり、税額の計算上、会社の費用とすることはできません。

②会社設立に費用がかかる

会社を設立するには法務局において登記をする必要があり、登録免許税や司法書士への手数料などの費用が約30万円程度発生します。

③手間がかかる

法人の税務申告では通常、事業年度末から2ヶ月以内に法人税の申告書と地方税の申告書を作成する必要があります。
個人申告については12月31日で締めた後、3月15日までの2ヶ月半の期間があったのに対し、法人は2ヶ月で申告をする必要があります。

さらに法人税の申告書については、法人税申告書、決算報告書、勘定科目内訳書、および法人事業概況説明書を作成する必要があります。通常、税理士に依頼することが多いです。

また、役員報酬については年末調整をする必要があります。

④赤字でも発生する税額がある

法人においては、赤字であっても前述した法人住民税の均等割は発生します。

⑤社会保険料負担が増える

役員報酬を受け取る場合には、社会保険については厚生年金と協会けんぽに加入することになります。

ある程度の金額を役員報酬として受け取る場合、フリーランスの時より社会保険の負担が増えることがあります。

 

2.具体例

以下では、具体例で解説していきます。

前提条件

  • 月額業務委託報酬100万円(年間1,200万円)
  • 経費 月額10万円(年間120万円)
  • 個人事業税の税率を5%とする
  • 法人化した場合の役員報酬月額75万円(年額900万円)、配偶者への給与を月額5万円(年額60万円)、社会保険料負担額(120万円)とする。
  • 復興特別所得税、消費税については省略します。

(1)法人化した場合

この場合、法人の利益はゼロ(※)となり法人の負担する税額は均等割のみとなります。

※1,200万円-(120万円+900万円+60万円+120万円)=0円

また、役員報酬を受け取った個人は年末調整をすることになりますが、配偶者の年間給与収入60万円については、給与所得がゼロとなり税額は発生しません。

(2)フリーランスの場合

フリーランスの場合には、事業所得が課税の対象となります。

両者を比較すると以下のようになります。

(3)フリーランスと法人化した場合の税負担等の比較

(単位:万円)

項目 フリーランスの場合 法人化した場合
売上高 1,200 1,200
経費 120 120
所得税住民税 202 106
事業税 40 0
法人にかかる税 7
社会保険料
(個人+法人)
130 234
支出合計 492 467
差引手許残高
(個人+法人)
708 733

年収1,200万円では、法人化した場合フリーランスの場合より若干税負担等が少なくなっていますが、前記事で解説した個人事業税の納税義務がない業種ではフリーランスのほうが有利となっています。

両者の主な違いは社会保険料の負担金です。
この社会保険料のうち厚生年金と国民年金については、負担する保険料の違いが将来受け取ることのできる年金に影響するため、どちらが有利かは一概に言えません。

まとめ

法人化の税務上のメリットが受けられるのは、利益金額がある程度見込まれる場合です。

ただし、数年間だけ独立して事業を行う場合には、会社を設立せずフリーランスとして行ったほうがよいでしょう。
例えば定年退職後、その業界のコンサルタントとして数年間事業を行う場合などでは、あえて会社組織にせずフリーランスとして行うことも検討すべきです。
なぜなら法人を廃業するには、再び登記等の費用が発生するからです。

一方、組織として継続的に事業を行い、拡大していく場合には会社として事業を行うことが望ましいでしょう。

法人化した場合、上記に挙げた以外にも契約を取りやすくなるなどのメリットがあることがあります。

法人化すべきタイミングや目安については、おおよそ売上金額が1,000万円以上継続する場合には検討するとよいと思われます。
ご自分だけで判断に迷う場合には、税理士や社会保険労務士などに相談することをおすすめします。

 

今回で『税理士が教える税金講座』は、最終回となります。サラリーマンとして仕事をするか、フリーランスとして仕事をするか、または法人化し、社長となって仕事をするかについては税金の損得だけではなく、個人の働き方、生き方に関わるテーマだと思います。

それぞれのメリット・デメリットを検討してご自身にあう方法を選択してください。
その際に、税金のことなどで不明なことがありましたらお近くの税理士にぜひご相談ください。

 

<税理士が教える税金講座!全6回>

【第1回】フリーランス(個人事業主)とサラリーマンの税務上の違いや手取り金額比較について

【第2回】節税にもなる!?フリーランスを始める際に必要な開業届や青色申告について

【第3回】フリーランスにとって重要な収入と必要経費について

【第4回】フリーランスが確定申告を行うにあたって注意すべきこと

【第5回】フリーランスが納めるべき所得税以外の税金の種類について

【第6回】フリーランスは法人化すべき?メリット・デメリットや法人の税金について

 


◆この記事の著者紹介
税理士 竹村 直樹(たけむら なおき)
税理士法人 髙柳総合会計事務所
https://www.takayanagi-sogo.com/
2009年 税理士登録
税理士法人 髙柳総合会計事務所の所属税理士として中小企業の決算・税務相談、会社代表者の相続・事業承継対策を中心に業務に携わる。
(社)ファルクラム租税法研究会研究員、(社)アコード租税総合研究所会員。
〔主な著書等〕
「墓地など嫌悪施設の存在により土地評価額に影響が生じる場合」税経通信72巻14号税務経理協会(2017)ほか。
共著
『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント-所得税裁判事例精選20-』(酒井克彦編著・監修、2018第一法規)


 

※具体的な処理や手続きにつきましては、最寄りの税務署又は税理士にお尋ねください。
本記事により発生したいかなる損失も執筆者及び株式会社クラウドワークス並びに税理士法人高柳総合会計事務所は責任を負いません。

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