税理士が教える税金講座!【第1回】フリーランス(個人事業主)とサラリーマンの税務上の違いや手取り金額比較について

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みなさん、こんにちは。税理士の竹村直樹と申します。

今回から全6回にわたりフリーランスにかかる税金に関する解説をしていきます。
フリーランスは、領収書さえあれば経費がたくさん使えて税金がサラリーマンより安く済むようなイメージを持たれている方もいらっしゃるかと思います。実際のところはどのようになっているのでしょうか?

税理士だからこそわかるような話をフリーランスの方にも分かりやすいように解説していきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

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目次

はじめに

第1回は「サラリーマンとフリーランスの税務上の違いについて」です。
皆さんの中には、フリーランスになる前には会社に勤務していた方や、現在サラリーマンで今後フリーランスに転身しようと検討されている方がいらっしゃると思います。
皆さんは、サラリーマンとフリーランスの税務上の違いは何か、お分かりになるでしょうか?

フリーランスとサラリーマンについて

1.フリーランスとは?

まず、フリーランスについて解説します。
税務的な取り扱いでは、フリーランスの報酬は「事業所得」という区分(所得区分)に該当します。
したがって、個人経営の商店主などと同じ区分になります。

なお、ここではフリーランスの定義を、2022年3月内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁、厚生労働省の連名で策定された「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」で示されている「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」とします。

受け取る報酬・売上等は収入金額となり、収入を得るためにかかった費用が必要経費となります。この収入金額から必要経費を差し引いたのが事業所得となります。

この金額から社会保険料等の所得控除を差引いた金額に税率を掛けて税額を計算します。
原則として確定申告を行う必要があります。

事業所得=収入金額-必要経費

所得税=(事業所得-所得控除)×税率

※他の所得や税額控除がない場合


■所得控除とは?
所得控除とは、社会保険料控除のほかに、医療費控除、配偶者控除など全部で15種類あります。


2.サラリーマンとは?

では、一方のサラリーマンはどうでしょうか?
サラリーマンの受け取る給料・賞与は給与所得という区分(所得区分)になります。この区分には正社員の給料、アルバイトのバイト代の区別はありません。

毎月支給される給料やバイト代、夏・冬にボーナスとして支給される賞与などが対象となります。
なお、退職金は給与所得に該当せず、退職所得という区分になります。

給与収入の金額に応じて給与所得控除が決定され、給与所得控除額を差引いた金額が給与所得となります。事業所得と同様にこの金額から社会保険料控除等の所得控除を差引いた金額に税率を掛けて税額を計算します。

この場合の給与収入とは税金・社会保険料控除前の額面金額のことです。
給与所得控除とは給与所得の一種の概算経費として認められているものです。

給与所得控除額は、給与の収入額で自動的に決定され、年収850万円超の場合は一律195万円(上限)です。(令和2年分以降)

また給与所得には、給与所得控除とは別に会社の職務遂行のために自己負担した研修費など一定のものについて特定支出として控除が認められていますが、あまり一般的ではありません。

給与所得の所得税については原則として年末調整で完結し、住民税についても勤務先の会社から源泉徴収票が各市町村に通知され税額が決定します。給与を1か所からのみ支給を受けている一般的なサラリーマンは確定申告の義務はありません。

ちなみに年収が2,000万円を超える方は年末調整によらず確定申告を行うことになります。

給与所得=給与収入額-給与所得控除額

所得税=(給与所得-所得控除)×税率

※他の所得や税額控除がない場合

3.サラリーマン(給与所得)かフリーランス(事業所得)かが争われた事例

以上のようにサラリーマン(給与所得)とフリーランス(事業所得)の違いについて説明してきましたが、ここでは、具体的な事例で両者の違いを見てみることにします。

『顧問弁護士の報酬が給与所得か事業所得か』について争われた事例があります。
訴えた弁護士は顧問先からの顧問料を給与所得として申告していましたが、税務署から事業所得で申告するように修正を受けました。

事業所得か給与所得に該当するかの計算上のポイントは、支出の必要のない給与所得控除が使えるか否かです。

この争いについて裁判所は事業所得、給与所得の違いについて次のように示しています。

「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい、これに対し、給与所得とは雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。なお、給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない。」

(最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決)

上記で示された事業所得の要件について確認してみましょう。事業所得の要件は次の3つです。

(1)事業所得の3要件とは

①『自己の計算と危険において独立して営まれ』、とは・・・
自己責任で行うということです。
この仕事を受けるか受けないか、受けるとしたらいくらで期間はどれくらいかで受けるかを自分で決めることです。このことは、まさにサラリーマンとフリーランスの決定的な違いでしょう。

②『営利性、有償性を有し』とは・・・
お金をもらって利益を上げるために行うことです。
従ってボランティア活動で生じた所得(損失)は事業所得に該当しません。

③『反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務』とは・・・
1回限りではなく継続的におこなうことです。

サラリーマンが副業として単発的に原稿の執筆の依頼や講演の依頼などの仕事を受けた場合には、この「反復継続して遂行する」に該当しません。
この場合には、事業所得でも給与所得でもなく雑所得という区分に該当することになります。

以上の要件を満たした収入が事業所得となります。
したがってフリーランス(事業所得)は業務日数や時間、業務場所に制限はありませんので自宅で行うことも週3日のみ行うことも自己の判断により可能となります。

(2)給与所得の要件とは

次に、給与所得の要件を確認してみましょう。
①『雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付』としています。
雇われて社長(上司)の指示に基づいて行う仕事の対価です。

②『給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるもの』
とは、まさに上記の事業所得①と反対の概念と考えることができます。
決められた時間に決められた場所で上司の指示に基づいて業務を行うことです。

(3)給料・報酬の支給方法による差は・・・歩合制給料と定額報酬の場合

それでは、給料と報酬の支払方法による違いはあるのでしょうか?

例えば歩合制であっても会社員は、雇用契約に基づいて会社に出社し、勤務時間内に上司の指示に基づいて業務を行っているため給与所得といえるでしょう。

一方、業務委託契約などによって定額の料金・報酬を受け取っている場合は、事業所得に該当するといえます。

以上の点についてフリーランスとサラリーマンの違いをまとめると次のようになります。

<フリーランスとサラリーマンの働き方の違い>

項目フリーランスサラリーマン
勤務地自由(依頼人と合意した場所)勤務先の指定した場所
勤務時間自由(依頼人と合意した時間)勤務先の指定した時間
収入自分で決定(依頼人と合意した金額)給与規程による
指揮命令自分で決定雇用主(上司の指示を受ける)

フリーランスの場合、すべての条件を自分で自由に決めることができ、すべては依頼人との交渉により仕事を受けるか受けないかを決定することができます。

フリーランスとサラリーマンの所得金額比較

それでは、フリーランスとサラリーマンの所得金額の違いを具体的な金額で見ていきましょう。

<例>

フリーランスAさんサラリーマンBさん
毎月の業務委託報酬 50万円
合計年収 50万円×12月=600万円
委託先までの交通費
月2万円×12月=24万円
事業に関連するその他経費
月3万円×12月=36万円
合計必要経費
24万円+36万円=60万円
事業所得(税金の対象の基礎となる金額)
600万円-60万円=540万円
月額給料 40万円×12月=480万円
ボーナス 1回60万円×2回=120万円
合計年収 600万円
※会社までの通勤費は非課税 出張費、業務で必要な備品代等は会社負担
給与所得控除額
600万円×20%+54万円=174万円
給与所得(税金の対象の基礎となる金額)
600万円-174万円=426万円

※この他に社会保険料等がありますが計算が複雑になるため省略します。


■社会保険料について
フリーランスの社会保険は、年金は、国民年金、健康保険は国民健康保険に加入することになります。
一方、会社員の加入する保険社会保険は、原則として年金は厚生年金、健康保険は協会けんぽに加入します。さらに雇用保険にも加入します 。これらの保険は会社側と半額ずつ負担することになっています。
両者の違いは、例えばフリーランスの年金である国民年金は個人単位で加入するのに対し、厚生年金は、サラリーマンの専業主婦は配偶者の保険に加入しているなど様々な違いがあります。


<年収と手取り残高の比較>

項目フリーランスAさんサラリーマンBさん
年収…①600万円600万円
支出経費…②60万円0円
所得金額…③(①-②)540万円426万円
概算所得税額…④ ※156万円 ※233万円 ※3
税引後手取現金残高…⑤(①-②-④)484万円567万円

※1 所得控除については基礎控除48万円のみとする。復興特別所得税については省略。
※2 540万円ー48万円(基礎控除)=4,920,000円
4,920,000円×20%-427,500円=556,500円
※3 426万円-48万円(基礎控除)=3,780,000円
3,780,000円×20%-427,500円=328,500円

§所得税の速算表(復興特別所得税を除く)

課税総所得金額等…A税額の速算式
195万円以下A×5%
195万円超330万円以下A×10%-97,500円
330万円超695万円以下A×20%-427,500円
695万円超900万円以下A×23%-636,000円
900万円超1,800万円以下A×33%-1,536,000円
1,800万円超4,000万円以下A×40%-2,796,000円
4,000万円超A×45%-4,796,000円

■所得税の税率について
所得税の税率の適用については、超過累進税率が採用されています。
超過累進税率とは一定金額を超えた場合に、超えた部分に対して高率の税率が課されます。
現在7段階に区分されています。


ここで注目したいことは、サラリーマンと同じ収入にも関わらずフリーランスのほうが、税金が高く手取り額残高が少なくなることです。

理由は、フリーランスの場合の必要経費は実際に現金を支出した費用であるのに対し、サラリーマンの給与所得控除は、実際の現金の支出がない控除のためです。

先ほどの裁判例でも、弁護士が顧問料を事業所得ではなく給与所得にしたかった理由がここにあるかと思います。

当然、このほかに、両者にはそれぞれ社会保険料等が発生しますが、同じ収入でも最終手取額が異なるということが分かります。

もちろん、業種によっては、必要経費が給与所得の給与所得控除以上にかかることはあります。しかし、その場合についても給与所得は現金の支出を伴わないのに対し、必要経費は現金の支出が伴うという点では同じです。
このことはサラリーマンがフリーランスに転身するうえで検討すべき重要な項目の一つだと思います。

この事例では同じ収入額で比較していますが、サラリーマン時代と同じ仕事をしていてもフリーランスになれば直接受託するため報酬は高くなることも十分考えられます。

まとめ

いかがでしたか?
サラリーマンとフリーランスの違いは働き方の違いであり、その働き方に応じて所得税の区分が異なることになります。

どちらが損か得かも重要ですが、それ以上にフリーランスとサラリーマン、どちらの働き方がご自身の生活に合っているかが重要ではないかと思います。

実際にフリーランスとして独立する前に収支のシミュレーションをすることをおすすめします。
その際に、税金の計算や社会保険料の計算については税理士や社会保険労務士に相談してみるとよいでしょう。

第2回目はフリーランスとして事業を開始するにあたって必要な開業届や青色申告・白色申告の違いについて解説したいと思います。


※具体的な処理や手続きにつきましては、最寄りの税務署又は税理士にお尋ねください。
本記事により発生したいかなる損失も執筆者及び株式会社クラウドワークス並びに税理士法人高柳総合会計事務所は責任を負いません。

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この記事を書いた人

竹村直樹のアバター 竹村直樹 税理士

2009年 税理士登録
税理士法人 髙柳総合会計事務所の所属税理士として中小企業の決算・税務相談、会社代表者の相続・事業承継対策を中心に業務に携わる。
(社)ファルクラム租税法研究会研究員、(社)アコード租税総合研究所会員。

【主な著書等】
「墓地など嫌悪施設の存在により土地評価額に影響が生じる場合」税経通信72巻14号税務経理協会(2017)ほか。
共著
『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント-所得税裁判事例精選20-』(酒井克彦編著・監修、2018第一法規)

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