ベテランフリーランス活躍中?苦戦中?
2015年版小規模企業白書(中小企業庁)によるフリーランスの年代構成を見てみると、50代が全体の38%を占めて最多となっています。次いで40代が36%と続くため、40代と50代の中高年世代で全体の75%を占めている、という結果になりました。
この調査で定義されている「フリーランス」の事業形態は、従業員がおらず、事業者本人が技能を提供することで成り立つ状態を指しています。アンケートに答えたフリーランスが営んでいるのは「専門・技術サービス業」が最も多く、次いで「情報通信業」でしたが、記述欄にデザインや出版、翻訳業と記載した回答も目立ちました。また約8割の人が「主業である」と答えていることから、フリーランスで生計を立てている人がほとんどで、さらに約半数が10年以上のフリーランス経験があるとしています。
このように、小規模企業白書では40代50代のベテランが台頭している様子が明らかになったわけですが、実際には年齢が上がるにつれてフリーランスを続けるのが難しくなる、という見解が根強いのは事実です。IT業界で「35歳定年説」がささやかれるように、40代、50代になってもフリーで生き残っていくのは並大抵のことではありません。
小規模企業白書では、フリーランス形態で事業を営むうえの不安や悩みとして、
第1位 収入の不安定さ
第2位 社会保障(医療保険、年金等)
第3位 自分の健康や気力の持続
があげられています。この調査は大多数が40代と50代の回答であることから、一つ一つ検証してみましょう。
不安や悩み第1位「収入の不安定さ」
国税庁発表の「民間給与実態統計調査」によると、サラリーマンの年代別平均給与は以下の通りです。
- 40~44歳 → 459万円(男性568万円、女性290万円)
- 45~49歳 → 491万円(男性638万円、女性292万円)
- 50~54歳 → 491万円(男性649万円、女性281万円)
- 55~59歳 → 485万円(男性629万円、女性275万円)
ただしこの平均給与から社会保険料などが差し引かれるため、実際の手取り額は低くなります。一方、フリーランスの場合、小規模企業白書では手取り年収で300万円未満という回答が全体の約60%を占め、300万円~500万円未満が約23%、500万円~800万円未満は約12%などとなっています。これはフリーランス全体の結果ですが、この調査の大多数が40代、50代の回答であったことを考えるとおおむね、同世代の給与所得者より低い水準にあることが分かります。また売り上げの傾向としても、「横ばい」や「減少傾向」と答えた人が全体の8割以上となり、将来的に収入の増加を見込むのは難しいと感じているようです。
不安や悩み第2位「社会保障(医療保険、年金等)」
晩婚傾向にあるため40代、50代でも子どもの教育費で大変な時期ですが、忘れずにおきたいのが老後資金のこと。個人事業主の場合は「第1号被保険者」として国民年金に加盟していますが、サラリーマンや公務員は「第2号被保険者」として厚生年金もしくは共済年金に加盟しています。第2号被保険者は国民年金に上乗せする形で保険料を納めているため、将来、受け取れる年金の額には大きな差がつきます。
一方で、フリーランスが加入する国民健康保険は前年度の所得によって保険料が決まるため、負担を感じる人が多いものです。そのため国内で美術や文芸、音楽など著作活動に従事し、各組合に加盟している人なら「文芸美術国民健康保険組合」を利用し、収入金額に関わらず一定金額の保険料を支払う方法もあります。
また、会社の健康保険組合なら病気やケガで休んでも「傷病手当金」を受け取れますが、国民健康保険にはないため万が一に備えて医療保障を見直しておく必要があります。近年は国内のクラウドソーシング会社でフリーランスの社会保障をサポートする動きがあり、たとえばクラウドワークスはライフネット生命と提携し、会員限定の「就業不能保険」を紹介しています。
不安や悩み第3位「自分の健康や気力の持続」
人生のターニングポイントとも言われる40代を境に、体力の衰えを感じる人も多くなります。具体的には老眼や四十肩、メタボ、更年期障害といった症状が出るようになり、脳血管疾患や心疾患、悪性新生物(ガン)のリスクも高まってきます。そのような中で、自分が働かなければ収入の手立てがなくなるフリーランスは、まずは「体が資本」。もし若いころと同じように徹夜で案件を仕上げるような状態を続けているのなら、働き方を変える必要があります。また、意識して運動やストレッチをする機会を増やすなどの努力も必要です。
メンタル面ではサラリーマンの場合、ちょうど会社生活の中間にあたる40歳前後で先が見えてしまい、退職までの残り20年間をどう働くべきなのか、意欲を見失ってしまう人が多いと言われています。この状態は「こころの定年」と表現され、深刻な場合だとうつ状態になってしまう人も。
その点、フリーランスでは収入や社会的評価の面で満足度が低いものの、「仕事の自由度や裁量の高さ」、「仕事の内容ややりがい」、「生活(プライベート)との両立」では「大変満足している」と「満足している」の回答が6~7割を占めています(2015年版小規模企業白書)。
一方で、直面するのはクライアントの担当者が自分より年下になる、という現実です。特にIT関連のベンチャー企業などは若い社員が大多数で、外注しようにも年上のフリーランスは使いづらい、という事態になるでしょう。また「35歳定年説」は否定されても、現実問題、スキルを磨き続けるのは大変なことですし、子どものころからWebに触れてきた10代、20代の発想や感覚と勝負するのは正直、無理があります。英語を普通にしゃべれて、SNSやブログで情報発信力のある若者も多く、その意味では40代、50代が不利になることも多いはずです。
さらに国境の垣根もなくなりつつあり、海外のフリーランスに発注を出す企業も増えてきました。単価の据え置きやダウンは今後も加速すると見られるため、若者や海外のフリーランスと勝負しなければならないような働き方は早いうちに変える必要があるでしょう。
参照:厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」
40代・50代がフリーランスとして活躍するには
- がむしゃらに働かなくても良い仕組みを作る
フリーランスでずっとやってきた人なら40代、50代で意識したいのは、ただひたすらに案件をこなすのではなく、もっと楽に働く方法を模索することです。これまでの経験やスキルを活かしてセミナーを開いたり、全体統括をするマネージメントやディレクターの立場で企画を立ち上げたり、起業するという道もあるかもしれません。
- 時代が変わっても重宝される存在であり続ける
これからは新興国のフリーランスとも勝負をしなければいけない時代。今後の技術発展によっては、人に頼らずマシンやロボットで対応できる仕事も増えてくるはずです。その中で中高年のフリーランスが生き残っていくためには、自分にしかできない「オンリーワン」を持つ必要があります。たとえば、コミュニケーションや文章力の面で日本語を使いこなす必要があるマーケティングプランナーやコンサルタント、原稿執筆や編集業務といった分野なら、海外のフリーランスやマシンに勝ち目はありません。一方でプログラマーやデザイン、コールセンター業務はどんどんと海外へ作業がシフトされていくでしょう。時代の流れに対応できる強さを極めていきましょう。
- 新しいことにも謙虚に取り組む
IT業界はもちろんですが、たとえばライター職であっても紙媒体にこだわっているようでは出版不況の現在においては完全に淘汰されていく存在です。SNSやブログを積極的に使いこなし、SEO対策にも取り組めるオールラウンダーでなければ採用される機会は減っていくでしょう。
- コミュニケーションしやすい人でいる
性格はなかなか変えられませんし、年齢が上がるにつれて他人の意見を聞き入れられなくなりがちです。納品物に対して出されたフィードバックに反論するような人もいますが、そのような態度では仕事のパートナーになれません。前述したように年上のフリーランスは使いづらいと感じる担当者が多いので、話しやすい雰囲気を心がけましょう。
- 海外や地方への移住も考える
収入に不安はあるけれどフリーランスの働き方を続けたい…。そう願うなら、どこに住んでいても仕事を請けられる立場を活かして、生活コストのかからない海外に移住するのも一つの現実的な方法です。海外はさすがに敷居が高いなら、地方に移住するだけでも随分と生活費は下がるはず。老後を楽に暮らす方法を柔軟に考えられるのは今のうちかもしれません!
- クラウドソーシングを活用する
もし40代、50代でフリーランスになろうとするならば、新規の営業は困難を極めるかもしれません。仕事の確保に困ったときは、クラウドソーシングの利用がオススメです。クラウドソーシングでは、Webでのやりとりで仕事が完結します。そのためネットコミュニケーションをしっかり行い、クライアントの要望通りに納品物を仕上げれば採用にあたって年齢を問われることはほとんどありません。
労働力不足を補うためにはシニア世代の活躍も期待されているのは間違いありません。中高年のフリーランスにとって厳しい現状も紹介しましたが、会社組織の中で働くか、自分らしさを追求するか、あなたならどちらを選択しますか?
参照:輝くベテランエンジニアになるためのいろはを解説した記事はこちら
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