経済産業省の発表によると、日本国内のITエンジニアは2030年には最大79万人のIT人材が不足するとのデータがあります。ITエンジニア需要が大きくなり供給が不足するという状況は、今後ますます深刻化すると考えられています。
供給不足になるというのであれば、現在はどれくらいのITエンジニアが日本にはいるのでしょうか?そして、ITエンジニアの人口はどのように推移しているのでしょうか?
ITエンジニアへのニーズ向上は、日本だけではなく海外においても同様です。海外のITエンジニア人口は、どの程度の規模となっているのでしょうか?日本と比較してどのような立ち位置になっているのでしょうか?
ここでは、5年から10年ほどの長いスパンにおいて、国が公表している統計データから、ITエンジニアの人口がどのように推移しているのか見ていきます。今回取り上げる国は、「日本・アメリカ・中国」の3カ国です。
国内・国外のITエンジニアがどれほど存在しているのか気になっている方にとっては、意外な面白い結果が出ていますので、注意して見てみてくださいね。
参照:システムエンジニアの海外事情について解説した記事はこちら
統計対象となっているITエンジニアとは?
この記事の情報源としているものは、日本では「IT人材白書」、アメリカや中国は、「統計局」がインターネット上に公開している情報を元にしています。
今回の統計では、ITエンジニアを、国内では「ITサービスを提供している会社の社員数」で算出し、アメリカや中国においては、「ITサービスに関わっている社員数」で算出しています。国内の場合は、ITサービスを利用しているユーザ企業の社員数は含めておりません。
「ITサービスに関わっている会社の社員数」となっているので、会社で技術者を社員として雇用し、IT企業に派遣しているような会社はカウントされているものの、単に派遣会社から派遣されているITエンジニアはカウントされていませんのでご注意ください。
基本的には増加を続ける日本のITエンジニア人口
日本のITエンジニア人口の推移
2014年度に調査した結果が発表されている「IT人材白書2015」を見てみると、日本のITエンジニアの人口は、
84.1万人
となっています。2014年の日本の労働者人口は「6,587万人」となっているため、ITエンジニアが日本に占める割合は1.27%となりますね。
「これからの時代はITだ~!」と叫ばれている時代の中でも、意外と低い数値になっているのではないでしょうか?
そして、過去5年間のITエンジニア人口の推移は以下のようになっています。
2009年度調査:77.1万人
2010年度調査:76.6万人(←要チェック!)
2011年度調査:77.8万人
2012年度調査:79.6万人
2013年度調査:81.9万人
2014年度調査:84.1万人
基本的には右肩上がりにITエンジニアの人口が増えているのですが、2010年度調査では減少に転じています。この大きな要因が「リーマンショック」ですね。このリーマンショックによる不景気のあおりを受けて、ITのユーザ企業がIT投資を一気に抑えたため、ITサービスを提供する企業は、採用停止や社員のリストラなどに追い込まれました。そこから景気が回復していることに伴い、ITエンジニア人口も増加していますね。
「指導や補助が必要」なITエンジニア人口の急激な上昇
そしてもう1点注目したいポイントが、2013年から2014年にかけて、「指導や補助が必要」な人材が急激に増加しているということです。
IT人材白書では、IT人材の中でも下記の4つのレベルに分けてITエンジニア人口を算出しています。
- 社内業界をリード
- 指導者・リーダー
- 自立して業務を遂行
- 指導や補助が必要
上記の4つのレベルに分けた統計は2013年から始まったのですが、2013年と2014年を比較すると、ITサービス提供企業の施策の裏側が見えてきます。
既に技術を持っているITエンジニアの人口(社内業界をリード、指導者・リーダー、自立して業務を遂行)はあまり変わっていないのですが、技術的に未熟であるITエンジニア(指導や補助が必要)が大きく増加しています。
特に顕著となっている職種が「システムアーキテクト」と「アプリ」であり、他の職種は平均で前年比15%程度の伸びであることに対して、上記2職種の前年比の伸びは、約40%となっています。それほど、アプリケーションに関わる技術者を育成しようとする動きが、IT業界全体で始まっているといえますね。
ある職種を除いて増加を続けるアメリカのITエンジニア人口
アメリカのITエンジニア人口の推移
アメリカのITエンジニア人口を調べる上で参考にした情報は「アメリカ労働統計局」です。ここには、様々な業種や職種ごとに雇用されている人数が公開されています。
その中からITエンジニア人口に関わる項目を抽出してみました。アメリカの過去10年間のITエンジニア人口の推移は以下のようになっています。
2005年:282.9万人
2006年:294.2万人
2007年:305.4万人
2008年:317.1万人
2009年:317.1万人
2010年:315.0万人(←要チェック!)
2011年:326.8万人
2012年:345.7万人
2013年:357.3万人
2014年:369.2万人
直近になるにしたがって、アメリカのITエンジニア人口の増加率が上昇していることがわかります。そして、日本と同じようにリーマンショックの影響からか、2010年にはITエンジニア人口が減少に転じていますね。
ITエンジニアが減少している職種とは?
ただ、複数のITに関する職種がある中で、2006年をピークにITエンジニア人口が減少し続けている職種があります。これはどんな職種だと思いますか?その職種とは
プログラマー
です。実際に数値として見ていただいた方が実感しやすいと思いますので、下記にプログラマー人口の推移も記載します。
2005年:38.9万人
2006年:39.6万人(←ピーク!)
2007年:39.5万人
2008年:39.4万人
2009年:36.8万人
2010年:33.4万人
2011年:32.0万人
2012年:31.7万人
2013年:31.2万人
2014年:30.2万人
(15-1021:Computer programmersより抽出)
日本と同様にシステムやアプリに関わるITエンジニアは、2005年と2014年を比較すると約50%の伸びを示しています。そのことから、プログラムを書ける人材は必要ではあるものの、ただ言われたことだけをコーディングする「プログラマー」に対する需要は、確実に減ってきているということがわかりますね。
アメリカに追いつく!?ここ数年で急激すぎる上昇を見せる中国
中国のITエンジニア人口の推移
中国のITエンジニア人口は、中華人民共和国国家統計局でインターネット公開されている情報を元にしております。ここでも、2005年から2014年にかけて、各業種で雇用されている人口を確認することができました。
それでは中国のITエンジニアは、どれくらいの規模になっているのでしょうか?
2005年:130.1万人
2006年:138.2万人
2007年:150.2万人
2008年:159.5万人
2009年:173.8万人
2010年:185.8万人
2011年:212.8万人
2012年:222.8万人
2013年:327.3万人(←要チェック!)
注目すべき点は、何といっても2012年から2013年にかけて急激に伸びているITエンジニア人口ですね。ここ1年で一気に100万人もITエンジニアが増加していることになります。アメリカのITエンジニア数が357.3万人(2013年)ですから、中国がアメリカにITエンジニア人口で肉薄してきた状況となっています。
中国のITエンジニアは、アメリカや日本などからのオフショア拠点として、単価を安く設定しても作業を行ってもらえる場所でした。ところが現在は、単価がどんどん上昇していき、今や日本とも大差が無いレベルにまでなってきたようです。中国の立ち位置というものも、年々どんどん変わっていくものですね。
まとめ
ここまで日本・アメリカ・中国のITエンジニア人口について解説をしてきました。2013年時点のITエンジニア人口としては、下記のような状況となっています。
日本 :81.9万人
アメリカ:357.3万人
中国 :327.3万人
日本は人口が少ないため、ITエンジニア人口も世界のトップと比較すると、大きく差をつけられている状況となっています。
そして、システムやアプリケーションに関するITエンジニアが求められているということが、日本だけではなくアメリカでも起こっていました。
ビジネスとITが密接に関わるようになり、その中でも必要とされているものが「システムやアプリケーション」ということですね。
正確な数字を見つけることができませんでしたが、ベトナムやインドなど、ITへ国を挙げて取り組んでいる場所でも、ITエンジニアは増加している傾向があるようです。
世界のITエンジニアが日本へやってくる未来も想定される中で、日本のITエンジニアがどうやって価値を生み出していくのかが問われる世の中になりそうですね。
参照:システムエンジニアの海外事情について解説した記事はこちら
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