IT系エンジニアとしてキャリアパスを考える際には、マクロ視点での転職市場マーケットの動向についての情報を定期的にキャッチアップする必要があります。おそらく、2016年現在では売り手市場の気が未だ強く、エンジニアとしてのキャリアにはあまり心配を抱いていない方も多いでしょう。しかしながら、この売り手市場が10年後まで続くとは限りません。
IT系エンジニアといっても様々な職種がありますが、それらの職種によっては徐々に買い手市場に移っていく職種も存在します。この記事では、それぞれの職種の今後の転職市場の需給バランスについてご説明します。
頭角を現す東南アジアのエンジニア
まず一番最初に目を向けなければいけないのが、東南アジアのエンジニアの存在です。もしかするとこの記事を読んでいる方の中には、既に東南アジアからやってきたエンジニアと一緒に働いたり、オフショアのメンバーとプロジェクト開発を共に行った経験があるかもしれません。
ベトナムやフィリピンなどをはじめとした東南アジアの一部の国々では、エンジニアの育成に非常に力を入れてきています。その結果、既に多くの東南アジア出身のエンジニアが日本で雇用されていますね。彼らは日本人より安価な労働力で雇用でき、最近ではスキルも日本人に引けをとらない程のレベルにまで到達しています。中には日本人よりも高い技術力を持っている人たちもいます。
このような流れからわかるように、日本人エンジニアをあえて雇用する理由が徐々に減ってきています。システムを作るという点ではどの国籍を持ったエンジニアが作ったとしても成果物はスキルだけに依存するため、国籍は関係ありません。問題点となるのは、コミュニケーションの部分ですが、東南アジアのエンジニアの中にはビジネス英会話スキルも持っている方が増えてきており、その人達をコミュニケーションのハブとしています。また、日本の企業側からも東南アジアとのコミュニケーション面におけるノウハウをためていて、その問題点を解消しつつある状況にあります。つまり、コミュニケーション面でも日本人と東南アジア人を雇用することによる差がほぼなくなってしまう日が近い将来くることが予想されます。
こうなってくると、日本人のエンジニアは東南アジアのエンジニアに代替されていくことになります。この話の対象となる職種はアプリケーションエンジニア、サーバーサイドエンジニア、フロントエンドエンジニアなどで大きな差はなく、全職種に共通する話です。
年々盛り上がりを見せるクラウドソーシング
3〜4年前から企業がクラウドソーシングを使うことは当たり前になりました。ホームページ製作から、新規プロジェクト構築まで幅広くクラウドソーシングは利用されています。Crowdworksのシステム開発案件やアプリ開発案件には毎日のように案件が掲載されています。
クラウドソーシングを使って案件を受注するフリーランスエンジニアが今後増えていき、企業内で働くエンジニアは少しずつ彼らに代替されていきます。企業のスタイルによって、完全内製型の開発スタイルの企業もあれば、外注に徐々に移行していく企業もありますが、マクロ視点では確実に外注に頼る企業が増えていきます。
特に簡単なホームページ制作やWebアプリケーション開発、ネイティブアプリケーション開発は外注されやすい傾向にあります。一方で、サーバーサイドエンジニアの案件などはクラウドソーシングにはあまり出しにくいものとなり、基本的には社内のサーバーサイドエンジニアが担当することが多いです。
つまり、プロジェクトの製作という単体納品型で完了するような職種はクラウドソーシングに代替されやすい傾向にあります。逆にサーバーサイドなどは中長期での保守運用が必要になってくるため、代替される可能性は低いでしょう。
XaaSによる代替可用性
今年に入り、mBaaSのParseが1年後にサービスを終了するというニュースがありました。このニュースは世間を大きく騒がせることとなり、SNSなどで色々な意見が飛び交いました。
このニュースの反応を見れば、どれだけの企業がParseを使っていたのかということが伺えます。3,4年前ほどまではまだmBaaSはそこまで盛り上がっていませんでしたが、この2,3年でそのニーズは加速度的に増えていっています。また、Webアプリケーション開発においてもY combinator出身のHerokuなどは長い間愛用されていて、現在でもユーザー数が増えていっています。
今後もよりBaaSは増えていき、それを使う企業は増えていくでしょう。自社でサーバー構築を行ってももちろん良いのですが、BaaSを使うことによるメリットを享受したいという企業が増えていることは事実です。
このような流れになると、一般的なサーバー構築などはBaaSに代替されていくことが予想されます。徐々にサーバー構築を自らの手ではなく、外部サービスによって簡単に構築してしまおうという企業が増えるはずです。
市場価値を維持するために必要なスキルとは?
これまでの話で、クラウドソーシングや東南アジアの外国人、XaaSなどによる代替が起こっていく要因を整理しました。
今後何も考えずに仕事をやっているだけだと、気づかない内に背後から彼らにあなたの仕事を奪われる時がやってきてしまうかもしれません。では、どのようにあなたの市場価値を高め、転職市場でキラリと光る人材になればいいのでしょうか?
まず、エンジニア内にある職種の中で、横断的にスキルを要している人材は代替されにくいと言えます。逆に言えば、ある一つのスキルだけだと代替されるリスクが高いということです。
例えば、アプリケーションエンジニアとしてWebアプリ開発のみのスキルを要している場合は、東南アジア系の人材に代替されてしまう可能性があるでしょう。こういう場合には、アプリケーションサイドのスキルを伸ばしながらも、フロントエンド開発側のスキルまたはサーバーサイド開発のスキルを身に着けていく方が良いです。スキルが1つであることと2つであることは、単純にその能力が2倍になったことにはならず、2.5倍、3倍のスキルアップとなります。なぜなら、企業内の状況に合わせて柔軟に動くことが出来、重宝される人材として活躍できるためです。
他の手法として、上流工程に関するスキルを身につけることは代替可能性を一気に引き下げてくれます。具体的には、サービス企画・仕様設計・基本設計・詳細設計・DB設計などです。これらの業務は事業と密接な関わりを持つものです。つまり、日本の文化をよくしらない東南アジア人には代替されにくく、クラウドソーシングなどではコミュニケーションコストが掛かるために外注しづらい分野ということです。
企画・設計という分野はテクノロジーによる代替の可能性も低いです。サーバー構築などはテクノロジーの力を活かせば自動化することができます。しかし、企画や設計は人間の脳を使って考えなければ完成させることの難しい分野です。こういった労働集約的な作業に目をつけて、なんとかテクノロジーで解決しようとする人が今後現れるかもしれません。とはいえ、今考える限りではその実現はなかなか難しいため、5〜10年くらいのスパンで見ても陳腐化しないスキルだといえるでしょう。
さらに他の手段としては、ディレクション系の業務に携わる経験を得ることもあります。エンジニア兼ディレクターとして業務を行うような人材は企業に重宝されます。エンジニアとしての開発経験・知識を要している人材がディレクターという立場に就くことによって、エンジニアとのコミュニケーション・マネジメントが効率的に行えるという大きなメリットがあります。非エンジニアのディレクターだと、エンジニアとの間に軋轢が生まれることは少なくなく、エンジニア出身のディレクターの場合はその可能性を低くすることができます。また、このような立場はクラウドソーシングに頼りづらく、外国人にも頼りづらい部分があります。
まとめ
エンジニアの転職市場の今後の需給バランスでは、今後5年ほどはまだ売り手市場といえますが、様々な代替手段によってそのバランスが一気に変化する可能性も潜んでいます。
そのような場合に備えて、エンジニアとしてのスキルの幅を持つ(プログラミング言語の種類の多さではなく、エンジニア内の職種の幅)か、上流工程の業務スキルを得るか、ディレクションなどのマネジメントの経験を積むと良いでしょう。目を光らせていればあなたの周りには、そういったスキルを得るためのチャンスがごろごろと転がっているかもしれません。チャンスをものにできるように、日頃からこのような内容を頭に入れておくといいかもしれません。
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