フリーランスとして活躍し事業が軌道に乗って来たとき、誰もが一度は「法人化すべきか、個人事業主のままでいくか」ということについて迷うのではないでしょうか。法人化についてはメリット・デメリットがあり、その人個々のおかれた状況によって法人成りをすることが望ましい人と、このまま個人事業主として第一線で活躍し続ける方がよい人がいます。また同じ人でもタイミングによっては、その恩恵が小さくなってしまう可能性もあります。
法人と個人事業主の大きな違いをふまえ、法人化するとしたらいつなのか、自分自身にはどちらが合っているのかを考えてみましょう。
法人化のメリットとは
法人化のメリットは大きく分けて3つあります。
- 税金面での優遇
- 法人という信頼の確保
- 法人でなければ受けられないサービスへの加入
では具体的にひとつひとつ見てみましょう。
【税金面での優遇】
法人化することで一番感じられるメリットは「税金面での優遇」です。フリーランスとして活動していると納めなければならない所得税額は、累進課税(稼いでいる人から多く徴収する)で決まります。法人の場合は所得税ではなく法人税を支払うことになりますが、
法人税の税率は課税所得800万円までの部分は15%(適用除外事業者は19%)、800万円を超える部分は23.2%(資本金1億円以下の場合)です。個人所得税の場合は累進課税なので、課税所得が増えるほど法人税率のほうが低くなります。そのため、年商が増えてくれば、法人化したほうが税金の負担が少なくなるのです。
【参考】所得税の税率
課税所得 | 税率 | 控除額 |
1,000~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万~329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万~1799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
また、経費についても、法人は個人事業主より認められる範囲が広くなるため、税負担軽減に繋がります。例えば、法人では事業者本人の出張日当や賞与、退職金なども経費として認められるようになります。
【信頼の確保】
法人は、登記情報が公開されていることから、個人事業主よりも社会的な信用は高くなります。特に大企業は取引先を法人に限定していることもあるため、法人化することで取引先や仕事の幅が広がります。
また、事業資金の調達も法人であるほうが有利です。
【法人でしか受けられないサービスへの加入】
法人化すれば、事業者本人も社会保険に加入できる福利厚生を充実させることができる、法人でしか参加することができない同業者組合へ参加することができるなど、様々なメリットが考えられます。とはいえ経費も増えますので、どちらがいいかは十分に吟味する必要があります。
どのくらいの年商で法人化する?
税金面での優遇を検討する時、どのくらいの収入があれば法人化することを検討した方がよいのでしょうか。もちろんその人の業種や置かれている状況などにより異なりますので、十分なシミュレーションが必要ですが課税所得600万以上という水準が一般的なようです。簡単に計算してみると、
課税所得600万円、資本金1億円以下で法人化を考える場合
法人税の場合:資本金1億以下、課税所得800万円以下の場合、税率は15%(※適用除外対象に該当しない事業者の場合)
→600万円×15%=90万円
所得税の場合:330万より多く695万以下の場合、税率20%、控除額42万7,500円
→(600万円×20%)‐42万7,500=77万2,500円
となります。上記の計算ではまだ所得税の方が安くなっていますが、法人化すれば生命保険料や退職金、その他、一部しか計上できなかったものが全額経費として認められることがあります。上記のように600~800万円以上の課税所得がある場合には、法人化を考えるといいでしょう。また、課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務が生じます。しかし、個人事業主から法人化すれば、開業2年目までは法人としての基準期間が存在しないため、2年間は原則免税事業者となります。そのため、年商が1,000万円を超える見込みがあるときも、法人化を検討するタイミングといえるでしょう。
法人化することのデメリットとは
法人化することのメリットと特徴を述べてきましたが、もちろんデメリットもあります。
1) 法人税が課せられる
先ほど「所得税より法人税の方がお得になるケースがある」ということをお伝えしましたが、逆に法人税の方が損をすることもあります。それは「赤字決算のとき」です。個人事業主であれば、赤字の際は税金が軽減または非課税になることがありますが、法人ではまったく収入のない赤字であっても7万円の法人住民税均等割を負担する必要があります。
2)社会保険料支払いなどの会社負担
法人化すると、必ず健康保険や厚生年金保険などの社会保険に加入しなければならないため、会社負担分のコストが発生します。事業者一人法人の場合も必要です。
また、売上額や経費が複雑になればなるほど、どうしても経理や諸手続きを1人でこなすことが困難になります。その際の税理士、行政書士などの顧問料も決して安いものではありません。
3)年途中で役員報酬額を変更できない
役員報酬は一期間に受領できる報酬の額を年度初めに決める必要があり、どんなに儲かったとしてもその額を変更できるのは翌年度からになります。逆を言えば、どんなに赤字だったとしても簡単には報酬額を変更できず、そのため思わぬ税金を支払わなければならなくなった、というケースも出てきます。
目先の損得だけで考えず、長期的に自分に見合った決断を
法人化には様々なメリットがありますが、上記で比較したことをもとにシミュレーションを綿密に行い、法人化に向けて準備をすべきかを考えましょう。イメージ先行で法人成りした場合、万が一廃業することになり、いちフリーランスに戻りたいと思っても一筋縄ではいきません。
一方、会社を創るということは大変ですが、それだけにやりがいもあります。商工会議所などで相談をすると、自分が法人として活動できるかの試算に対し助言をもらえるので、1人で判断に迷ったら、ぜひ窓口を訪れてみてください。
参照:フリーランスの法人化のメリット・デメリットや法人の税金について解説した記事はこちら
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