個人事業主として働いているフリーランスの方には、法人化した方がいい方々と、しないほうがいい方々がいらっしゃいます。個人事業主から法人に移行すると、税金関係や保険制度などが大きく変わるため、メリットとデメリットが発生するためです。
法人化を検討されている場合は、法人化のメリットを取りこぼさないよう、また法人化したときに不利益を被らないように、「法人化」という制度について正しく理解しておく必要があるでしょう。
ここでは、フリーランスになって数年経っている方、またこれからフリーランスとして法人化を視野に入れている方々に向けて、法人化したときのメリット・デメリットはもちろん、どんな方が法人化した方がよいよいのかをご説明していきたいと思います。
法人化した場合のメリット
それでは、フリーランスの方が法人化した場合に受けられるメリットについていくつかご紹介していきましょう。
所得税のかわりに法人税を収めて節税できる
どなたでも一番に思い浮かぶメリットとしては、節税効果があるという点でしょう。
具体的には、なぜ法人の方が節税になるのでしょうか。
個人事業主では、所得税の累進課税制度によって、収入が上がれば上がるほど税率も上がっていきます。
しかし、法人の場合は所得税の代わりに収めるのが「法人税」になります。軽減税率などの特例を除き、一律固定の割合を支払うことになりますので、所得が多い方は法人化して法人税を収めた方が節税になるでしょう。
社会的な信用度が上がる
本来は、フリーランスでも会社組織でも、同等のサービスを提供できるのであれば同じ信用度を持たれるべきかと思いますが、世間の意識はまだそこまで追いついていないのが現状です。
しかし法人化して会社を設立すると、信用度がぐんと上がります。事務所を賃貸契約したり、ローンを組んだりする場合でもフリーランスよりは比較的スムーズに手続きが進むケースが多いようです。
本業の面でも、「法人化してくれれば、取引できるんだけど・・」というクライアントがいることがありますので、フリーランスよりも仕事の受注機会が増える可能性があります。
銀行からお金を借りやすくなる
これは「信用度が上がる」にも関係しますが、法人にすると資金の調達がしやすくなるでしょう。フリーランスの身では門前払いをくらった方でも、法人化して会社組織を作ると銀行の態度が変わった、という話もあります。
将来的には事業を拡大したいと考えている方は、資金調達をするためにもぜひ法人化するべきかもしれません。
家賃をほぼすべて経費として計算可能
法人として賃貸契約して、社宅ということにすれば、家賃の9割ほどを経費に計上することができます。
個人事業主では、自宅を事務所にしている場合でも、自宅の何割を仕事のスペースとして利用しているかによって経費として認められる金額が変わります。だいたいの場合、家賃の5割以下しか認められないでしょう。
法人として契約すると、ほとんどが経費でまかなえるので節税効果は大きくなります。
社会保険に加入できる
これはメリットでもありデメリットにもなりうる部分ですが、個人事業主、自営業者が入る国民健康保険・国民年金から、社会保険・厚生年金に切り替えをすることになります。
ただし、社長一人しかいないフリーランスの法人であっても、必ず加入しなければなりません。会社の売上げ額によっては大きな負担になる可能性もあるので、ここも法人化を検討するポイントになりますね。法人化にあたって、特に支出が大きくなる部分のひとつでしょう。
離れて暮らす家族を社員として雇用できる
節税方法として、家族を雇用してその給料を経費で支払うという方法がありますが、個人事業主の場合は同居をしていなければ認められません。
しかし、法人化して雇用すれば、必ずしも同居していなくても問題なくなるのです。離れて暮らす家族を社員として雇用すれば、給料はすべて経費になりますので、これも節税対策となります。
法人化した場合のデメリット
残念ながら、法人化すると大変になることもあります。次に、法人化した場合に生じるデメリットについてご説明してみたいと思います。
法人住民税均等割の支払い
法人税も、赤字であれば法人所得税や法人事業税はゼロになります。しかし、法人住民税は別です。法人になると、年間約7万円〜の法人住民税均等割というものを支払う義務が発生します。これは、赤字であろうがなかろうが関係なく支払わなければなりません。
法人税申告には複式簿記を作成しなくてはならない
法人化すると、法人税申告に単式簿記ではなく複式簿記を作成する必要があります。これは非常に複雑で、日商簿記検定や税理士試験を受ける方が勉強するものでもあります。
個人事業主の場合は、現金の入出項目を単純に入力していけば自動で単式簿記を作成できるソフトがたくさんあります。
しかし法人税申告の場合は計算が非常に複雑になるため、専門の税理士・会計士さんなどに依頼することになるでしょう。もちろん、毎年費用がかかることになります。
失業手当の給付なし
社長以下会社の役員は、万が一会社が失敗して失業しても、失業給付は出ませんので注意が必要です。
ただし役員でも、部長などの社員としての身分を兼務していれば話は別です。失業保険に加入できますので、失業保険の被保険者になれます。
法人化を決める一つの目安とは
このように、個人事業主と法人では様々な点で違いがあり、メリットとデメリットもそれぞれです。個人事業主としてフリーランスをされている方がそのまま個人事業主として続けた方がよいのか、法人化した方がよいのかは、ズバリ「売り上げ」によります。売り上げの金額によって、法人化した方が得か損かが変わってきます。
法人化しない方がよい場合
法人化をしない方がよい場合は、売り上げがだいたい800万円以下の場合でしょう。
法人化すると、経理や事務作業がぐっと複雑になりますので、売り上げがそこまでない場合には作業にかかる時間・労力のコストに比べて節税できる金額が少なく、割に合いません。
しかし、600万円〜800万円ぐらいの方は少し迷うところです。法人化で増えた経理作業や事務作業の手間を自身で行うことができれば、少し節税の見返りがある場合があります。
ただし税理士に丸投げしてしまうと、結構な費用がかかりますので微妙なところです。
法人化した方がよい場合
法人化した方がよい場合は、だいたい800万円以上〜の収入がある方でしょう。
1,000万円以上の売り上げになった場合、まず間違いなく法人化を考えるべきかもしれません。ただし、売り上げが1,000万円以上になると、個人事業か法人化にかかわらず消費税の納税義務が発生しますので注意です。
まとめ:法人化は売り上げを見て判断
フリーランスが個人事業主から法人になる場合、このように様々なメリットとデメリットが発生します。
そして法人化によるデメリットは、売り上げが高くなればなるほど解消される形になりますので、800万円〜1,000万円以上の売り上げがある方は、法人化するメリットが大きくなるでしょう。
法人化のメリットが多くなる売り上げになったとしても、すぐに動かなければならないというわけでもありません。今後も順調にこの売り上げを確保し伸ばしていけるかどうか、過去数年の売り上げも分析してた上で判断してみてください。
また、フリーランスから法人化した方で、ここに挙げなかったデメリットを体験された方や、思わぬ落とし穴にハマり困ってしまった方などがいらっしゃいましたら、ぜひ情報をお寄せいただければ幸いです。
参照:法人化のメリット・デメリットや法人の税金について税理士が解説した記事はこちら
フリーランスになるために必要な知識やスキルアップの方法等、様々なお役立ち情報を発信していきます。
(リモートワーク案件に強いフリーランスエージェント「クラウドワークス テック」を運営)