フリーランス新法(正式名称:フリーランス・事業者間取引適正化等法)はとは、組織に属さず働くフリーランスの「取引適正化」および「就業環境の整備」のための法制度で、5月12日に公布されました。
働き方の多様化に伴って年々フリーランスとして活動する人材は増加傾向にありますが、不当な契約やトラブルに巻き込まれるケースも多く、フリーランス保護・取引の適正化を目的に法整備が進められました。
本記事ではフリーランス新法についての解説や、企業が対応すべきポイントについて解説をしていきます。
フリーランス新法とは何か
フリーランス・事業者間取引適正化等法(以下「フリーランス新法」)は個人(フリーランス)が業務を受託した際に、当該業務に安定的に従事することができる環境を整備することを目的に作られました。
当該法案の中ではフリーランスを「特定受託事業者」と定義し、対象となる条件を明示しています。
当該法案は順調にいけば2024年秋頃までの施行が予定されており、フリーランス活用を行っている企業は対応が求められます。
特定受託事業者の定義
フリーランス新法の法案の中では、フリーランスを指す「特定受託事業者」は以下のように定義されています。
- (1)「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないものをいう。[第2条第1項]
- (2)「特定受託業務従事者」とは、特定受託事業者である個人及び特定受託事業者である法人の代表者をいう。[第2条第2項]
- (3)「業務委託」とは、事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託することをいう。 [第2条第3項]
- (4)「特定業務委託事業者」とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者であって、従業員を使用するものをいう。[第2条第6項]※ 「従業員」には、短時間・短期間等の一時的に雇用される者は含まない。
引用:厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の概要」
上記のように、特定受託事業者とは業務委託をされる側(業務を行う側)であり、「従業員を雇わない事業者」を指しています。
これに対し業務委託を行う側は「特定業務委託事業者」と定義され、「従業員を使用するもの」と定義されています。
フリーランス新法の概要
フリーランス新法の中で定められているのは、大きく以下の5点が挙げられます。
フリーランス新法のポイント
- 契約条件を書面で提供
- 報酬の60日以内の支払い
- フリーランスの利益を損なう不当な扱いの禁止
- 募集情報の適正化
- フリーランスの労働環境整備に努める
上記について違反した場合には、公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣から「助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令」を受ける可能性があります。
また、命令違反及び検査拒否などに対しては50万円以下の罰金刑もあるため、しっかり対応していく必要があります。
フリーランス新法の背景と目的
これまでの日本では企業が個人を従業員として雇用することが前提で法整備が進められており、個人で活動するフリーランスを保護する法律は未整備の状態でした。
そのため、企業間で行われる取引に比べ、取引上の不利益を被る機会が多く、様々なトラブルが発生していました。
「フリーランス実態調査結果」によると取引先とのトラブルを経験したことのあるものの割合は約4割(37.7%)に上り、多くのフリーランスがトラブルの直面したことがあると分かります。
また、トラブルの経験があるフリーランスの約6割は書面や電子メールにおける取引条件の交付がされていない、もしくは受け取っているが取引条件の明記が不十分であったと回答しています。
フリーランス人口が増え続けている中、このような背景を踏まえてフリーランス新法による労働環境の整備が急がれています。
参照:内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査結果」
フリーランス新法の施行時期
フリーランス新法は国会提出・審議を経て2023年4月28日に成立、同年5月12日に公布されました。
現状、施行日が決まっているわけではありませんが、遅くても2024年中には施行される見通しです。
そのため、フリーランス人材の活用を行っている企業では早めに同法に対する対応を進める必要があります。
企業が準備するべきポイント
フリーランス新法の施行までに、企業としては以下の2点の対応を検討する必要があります。
- 雇用形態の見直し
- フリーランス新法の各ポイントへの対応
以下に解説していきます。
雇用形態の見直し
フリーランス人材を活用している企業の中には、当初の契約にはなかったような幅広い業務を任せている場合も多いようです。
その場合、フリーランス新法の施行に合わせて契約条件の見直しを行う必要がありますが、もし自社の社員と遜色ない依頼内容・成果物となっている場合は、自社雇用を検討してみるとよいでしょう。
フリーランス市場の人材は、正社員雇用などの市場にはいない稀有なスキルを持った人材であることが多く、自社で雇用を出来れば安定して当該スキルを活用することが出来ます。
そのため、既に企業とフリーランスとの間で関係性が出来ているのであれば、自社雇用を打診してみるのがオススメです。
ただし、給与や就業日数等、自社の雇用条件では折り合いがつかない場合もあるため、交渉は慎重に進めましょう。
フリーランス新法の各ポイントへの対応
フリーランス新法では企業が対応すべきポイントが大きく以下の5点があります。
フリーランス新法のポイント
- 契約条件を書面で提供
- 報酬の60日以内の支払い
- フリーランスの利益を損なう不当な扱いの禁止
- 募集情報の適正化
- フリーランスの労働環境整備に努める
ひとつづつ以下に解説していきます。
契約条件を書面で提供
企業とフリーランス間でトラブルを経験したことのある方の多くが「書面での契約条件の交付」が不十分であったことから、フリーランス新法では報酬を契約条件を書面で交付することが定められています。
そのため、現在フリーランスとの契約において書面での交付を行っていない場合は、対応が必要となります。
※契約条件の交付は書面または電磁的方法でも可能
報酬の60日以内の支払い
フリーランス新法では報酬の支払いについて「60日以内の報酬支払期日の設定」をしなければならないとされており、現状の支払いサイトと異なっている場合は対応が必要となります。
また、「再委託の場合は発注元から白井を受ける期日から30日以内」とされているため、併せて確認をしておきましょう。
フリーランスの利益を損なう不当な扱いの禁止
フリーランス新法ではと木曳の適正化のために「フリーランスの利益を損なう不当な扱いの禁止」されているのが特徴の一つです。
具体的には、以下の事項についての近似が明記されています。
- ① 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること
- ② 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
- ③ 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
- ④ 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
- ⑤ 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
- ⑥ 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
- ⑦ 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること
引用:厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の概要」
フリーランスの就業環境の整備
上記に記載した点以外にも「募集情報の適正化」や「ハラスメントに係る相談体制の整備」等、フリーランスの就業環境整備のために対応が必要な点があります。
フリーランスにはこれまで労働基準法などの労働関係法令が適用されていなかったですが、フリーランス新法によって就業環境の整備が企業に義務付けられることになります。
これにより、出産や育児との両立やハラスメントに対する相談対応等の整備をすることが必要なります。
フリーランス新法についてまとめ
フリーランス新法は多様な働き方を支え、フリーランスとの取引適正化を図る新しい法律です。
不当な扱いやトラブルに見舞われやすいフリーランスの就業環境整備を行うため、企業には様々な対応事項が発生します。
働き方の多様化に合わせて優秀な人材を活用していくためにも、フリーランス新法への対応を進め、フリーランスの方が活躍しやすい環境を整えていくことが企業に求められています。
フリーランスになるために必要な知識やスキルアップの方法等、様々なお役立ち情報を発信していきます。
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