中学生の頃からプログラミングに触れていたというベテランエンジニア坂口孝志(さかぐちたかし)に、新卒1年目のエンジニアにお薦めしたい3冊を紹介してもらいました。
エンジニア歴17年目であり、フリーランスを経験したこともある坂口は、現在鳥取県在住で、主に在宅勤務が中心です。今回、Webエンジニアに向けてセレクトした、「手元に置いておきたい技術書」は、坂口自身が今でも読み返す技術書だそうです。
参照:「問題解決」のために読んでおきたいエンジニアにおすすめの本を紹介した記事はこちら
文系出身のエンジニアに読んで欲しい
「プログラマの数学」
─ この本を手にしたきっかけを教えてください
この本は、「作者買い」でした。著者の結城浩さんは、数学関係の書籍を多数執筆している方なんですが、作者にひかれて購入したのがきっかけです。
─ いつ頃どの位期間を掛けて読んだのですか?
出版されてすぐに読んだので2005年頃でしょうか。「全て読んだ」という意味では、2~3日位かかったと思います。そんなにボリュームも多くはなくて、書いてある内容もそこまで難しくはない本です。
─ この本にはどんなことが書かれているのですか?
数学の本なんですけれども、「プログラムを作る」って論理的な思考が必要になってくるんですが、そういう意味での数学的な考え方を身に着けようという本です。
理系出身者は、プログラムをやるうちに自然に身に着くものですが、文系からプログラマーを目指す方にはより参考になる箇所が多いかもしれないです。そういう意味では、文系からプログラマーになった方にこそ読んでいただきたい本です。
─ どんな所が良かったですか?
人に教えるような立場になった時に、どんな本が良いか考えてこの本を薦めてみたりとか、数学的な内容を教える際にも使えるのが良かったです。
─ どうしてこの本を新卒1年目のエンジニアに薦めたいと思ったのですか?
IT業界って文系出身で適正も分からない人たちが、いきなりプログラムの世界に投げ込まれて、行き詰ってしまって「向いていない」って辞めてしまうことを聞いたりするんです。少なくとも、プログラムを組む・作り上げるということを知っていると、リスクの軽減ができると思います。
この本に書かれているような、プログラミングのベースになる論理的な思考の知識があることで、多くの人たちが救えると思うんです。
「最初のやり方がわからなくて詰まって辞めてしまうところを救うところで、エンジニアが増えてハッピーになるといいな」と思ってこの本を紹介しました。
─ どんなタイミングで読めば良いでしょうか?
本の前半でいえば、小学生でもわかるところはあります。内容はそれだけわかりやすくて、中学生位になっていればひと通りは読める本なので、是非新卒で入社した直後に読んで欲しいと思います。
Webシステムを体系だてて学ぶことができる
「Webを支える技術」
─ 何がきっかけでこの本を読んだのですか?
この本も「作者買い」でした。著者の方と縁があってしばらく一緒に仕事をしていたことがあったので、興味を持って買いました。
─ いつ頃どの位の期間で読んだのですか?
発売直後の2010年に、仕事の合間に1週間位掛けて読みました。
─ どんなことが書かれている本ですか?
インターネットの技術として、HTTPとかHTMLの技術について体系だって解説した、「インターネットの仕組みがわかる本」です。
例えば、インターネットアドレスのURIはこういう風に成り立っているとか、こういう通信のやり取りはこういう風に成り立っていると解説しています。
そして、その技術を使ってこういう風にWEBシステムをデザインすると好ましいと紹介してある本です。
─ デザインにも言及しているんですか?
ここでいう「デザイン」とは、ビジュアルの意味のデザインではないです。例えば、インターネットアドレスの名前付けとかもいうならばデザインでして、アドレスが直感的にもわかりやすいとかを指します。
HTTPのしくみにおいても、適当に作ったら動いたのでなく、「しっかりと基礎ができた上で作ると正しい設計として成り立っていけるよ」という意味でのデザインです。サイトページと人間というよりは、プログラムとプログラムの間のインターフェイスに対してのデザインですね。
─ お薦めの箇所を教えてください
初めて読んだ時期は、Webのプログラミングに携わって1~2年経った時でした。それまで案外中途半端な知識があったので、この本を読むことによってWEBプログラミングの知識をしっかりと身に着けることができました。
─ どうして新卒のエンジニアにこの本を紹介しようと思ったのですか?
Webシステムを実際に少し経験したうえで、Webシステム構築でわからないというタイミングって知識が歯抜けになっていて、つぎはぎでスキルセットが形成されているタイミングだと思うんです。
何がわからないかわからないけど、もやもやする。そういうタイミングに、ひと通りが学べる本は価値が出てくるので、仕事をしばらく回した後の振り返りに良い本だと思います。
エンジニアの無限の可能性を感じられる本
「プログラマのためのSQL 第4版」
─ この本を読んだきっかけを教えてください
2010年前後 (当時は第2版) に読んだのですが、その頃エンジニアに基礎技術を教える立場に立つことがあって、その中で「データベースを教えるにはどういう本が良いか」考えて見つけました。
─ どんな本か紹介してください
プログラマーの技術として、Webみたいなのもあるんですが、「データベースに関する技術」というのが別枝で必要になってくるんです。いわゆるデータベース管理システムといわれる、データベースを操作する言語としてSQLというのがあります。そのSQLについて詳しく説明した本です。
─ 発売から5年以上たった技術書ですが、「今でも役立つベーシックな知識を得ることができる本」という認識でよろしいでしょうか?
例えば、「簿記」っていつまでも枯れることがないですよね?
汎用性が高く、かつドラスティックな変化がない基礎技術である訳です。データベースについては、SQLはそういうような扱われ方をしているので、おさえておきたい知識といえます。
─ どうして新卒1年目のエンジニアにお薦めしようと思ったのか聞かせてください
データベースはWebシステムに限らず、業務システムにおいても使うので色んな分野のエンジニアさんにお薦めしたいと思いました。書いてる内容が割と難しいので、手元に置いておいて必要に応じてあたるのが良いと思います。自分も今でも必要に応じて読んでいます。
エンジニアを楽しむために、「専門書の読み方」を知ってほしい
─ どうしてこの3冊を選んだのですか?
1冊目は、「新卒」のタイミングで読んで欲しいという思いで選びました。
2冊目はWebのニーズは多く、エンジニアに対して求められる所といえます。色んなことを経験する中で、流れのはやいWebの中できっちり学ぶ機会を取れないことは珍しくありません。そんな時に、ひと通り体系だって学んで自信を持てる本としてお薦めしたいと思いました。
3冊目はデータベースの大切さは勿論ですが、お守りとして持っておきたい本をあげてみました。手元に置いて定期的に読んで欲しいですね。
─ 新卒の時はどのくらい本を読んでいましたか?
自分は、新卒の頃は技術書ばかり読んでいて、転職も考えていたので、資格取得をするための技術書を読み漁っていました。なので、本代は1ヶ月に10,000円位掛けていましたね。
─ 凄いですね!最近はどの位本を読んでいるんですか?
今は半分くらいに減って、1ヶ月5,000円位でしょうか。kindleを愛用しているのですが、セールがあって専門書でも時々安くなるんです。今読みかけている「漫画でわかる統計学入門」という本は、たまたま半額以下になっている所を見つけて購入しました。
─ 新卒のエンジニアの皆さんに読書に関してアドバイスをお願いします
専門書ってボリュームがあって難しいものも多いんです。だから、「全部読もうとしなくていい」と思います。読破を目標にしないで、定期的に必要に応じて触れてあげて徐々に理解を深めれば良いのです。難しい本との付き合い方を知って、読書を楽しんで欲しいです。
技術書にはトレンドもありますが、坂口の紹介した技術書はベーシックであり、新卒時だけではなく折に触れて読みたい本といえます。教える立場だからこその外れのないセレクトですね。
【新卒1年目のエンジニアにお薦めの本3選】
この記事の著者 by あおみ ゆうの 制作集団ことのは代表 ライター/ディレクター お酒と紅茶とブッフェと編み物と漫画が大好き クラウドワークス:あおみ ゆうの |
フリーランスになるために必要な知識やスキルアップの方法等、様々なお役立ち情報を発信していきます。
(リモートワーク案件に強いフリーランスエージェント「クラウドワークス テック」を運営)