今、システム開発の現場では「システムエンジニア(SE)が足りない!」と言われていることをご存知でしょうか?確かに以前から何か大きなイベントがあるたびに「今後システムエンジニアが不足する。」と言われて続けています。システムエンジニアの需要が年々高まっているのは確かではありますが、SE不足という言葉は言われ続けすぎているため、形骸化しているのではないか、とさえ感じることがあります。
今回は、次の様な視点で「システムエンジニア不足問題」について考えてみたいと思います。システムエンジニアが採用できないという会社経営者や採用担当者、これからシステムエンジニアになりたいと考えている方、現役システムエンジニアの方へ参考となるように書いていきます。
- そもそも本当にシステムエンジニア(SE)不足しているのか?
- もしSE不足が本当だとすると何故SEは不足しているのか?
- 今後SE不足問題はどうなっていくのか?
- 今後のSE不足の要因の一つと考えられる「2020年問題」について
参照:エンジニアのニュース情報収集術について解説した記事はこちら
そもそも本当にシステムエンジニア(SE)不足しているのか?
まず厚生労働省が作成した「労働市場分析レポート 第 61号(平成28年1月29日)」(*1)という資料を参照してると、最近求人倍率が高くなっている職業についての分析が行われていますが、システムエンジニアは最も求人倍率が高い職業ではないものの、「情報処理・通信技術者」という職業としてですが、求人倍率の高い職業として紹介されていました。
もう少し詳しく見ていきましょう。上記レポートでは、平成21年以降の各職業の求人倍率が示されていますが、「情報処理・通信技術者」の求人倍率の変化を調べてみると以下の様になっていました。
0.83倍(平成21年) 2.96倍(平成25年) 3.25倍(平成26年)
これを見るとやはりシステムエンジニアの求人倍率が高くなっている事がわかります。求人倍率が高くなるということは、求人数が求職者数に対して増加しているか、反対に求人数に対して求職者が減少しているかのどちらかですが、これらの関しても本レポートに記載があるので見てみましょう。平成21年と、平成26年の「情報処理・通信技術者」の求人数、求職数は以下の様になっていました(先ほどの求人倍率も再度示します)。
求人者数: 7,797(平成21年) 16,172(平成26年)
求職者数: 9,442(平成21年) 4,975(平成26年)
求人倍率:0.83倍(平成21年) 3.25倍(平成26年)
ご覧頂ければ分かるように、平成21年から平成26年にかけて、求人者数が2倍以上になっているにもかかわらず、求職者数は約半分になってしまっています。このため、大きくシステムエンジニアの求人倍率が上昇していると考えられます。求人倍率からだけではありますが、これらの数字を見る限りやはりシステムエンジニアは不足しているようです。特にIT関連企業としては、十分な数のシステムエンジニアが採用出来ないのは死活問題と言えます。
もしSE不足が本当だとすると何故SEは不足しているのか?
先ほど確認したように、最近ではシステムエンジニアの求人者数が増加しているにも関わらず、求職者数が減少していることが分かりました。求職者は売り手市場という事になりますが、実際には思うような企業に就職することが出来ないとも良く聞きます。逆に筆者が所属している会社でも、採用担当者が良いシステムエンジニアを採用出来ないと良く嘆いているのを聞きますし他社でも同様な事を聞きます。採用する側の企業と、求職者であるシステムエンジニア側のこのギャップはどこから生まれるのでしょうか?
まず求人数が増加している件は、IoT案件の増加や自動運転など自動車関連の組み込みシステムの需要の増加、ある都市銀行のシステム刷新プロジェクトが終盤に差し掛かっている事などが関係ありそうです。もちろん引き続きWEB案件の引き合いも多いようです。
ここでは銀行システムを例に取ると、銀行のシステムの様な大規模システムは非常に多くの人員を必要とします。ただし、以前から言われている様にこの様な大規模案件では必ず、2次請け、3次請け、4次請け・・・という多重下請け構造になっています。下層に行くほど人員数が必要になりますが、当然単価自体は高くなります。つまり単価の安いエンジニアが大量に必要になるわけです。下層を担当する企業は、プロジェクトに投入できる単価の安いエンジニアを数多く採用したいため、多くの求人を行うことになりますが、システムエンジニアとしてはなるべく避けて通りたい案件の1つです。
一方、求職者数が減少している件に関しては、以前よりもシステムエンジニアの職業としての人気の低下が考えられそうです。システムエンジニアは以前(だいぶ以前?) は、先端の横文字職業としてある程度の人気があったと思います。しかし、最近ではIT土方などと揶揄されるように新3K等とともに学生等に広まり、システムエンジニアは仕事がキツイ職業としてのイメージが高いようです。
また、実際にシステムエンジニア職についたとしても、ここ最近の世相を表すようにすぐにシステムエンジニアを辞めてしまう方も多いようです。以前は、会社をやめたとしてもシステムエンジニアは辞めずに他の会社に転職する方が多かったのですが。また、システムエンジニア職としても学生に人気が高いのは、自社でWEBサービスを提供している有名企業などですが、このような企業は一般的に門戸が狭い傾向があります。
このように、多くの企業が求めるシステムエンジニア像と求職者の求めるシステムエンジニア像の違いから、システムエンジニア不足が拡大しているのでは無いでしょうか?
みなさんはどう考えますか?
今後SE不足問題はどうなっていくのか?
システムエンジニアを採用する企業と求人者のシステムエンジニア像に対するアンマッチが解決しない限り、今後もシステムエンジニアの不足問題は引き続き長引きそうです。誤解を恐れずに言えば、「介護職員の人材不足問題」等と程度の差こそあれ、根底の問題は同じかもしれません。若い人たちに、あまり魅力的な職業とはなっていないようです。ただし、システムエンジニアは今後も社会を支えていくための重要な仕事であることにかわりはありません。システムエンジニア不足を解消するためには、労働条件の向上などより魅力的な職業とする必要がありそうです。
SE不足はシステムエンジニアにとってネガティブ?ポジティブ?
システムエンジニア不足は企業や社会にとっては明らかにマイナスです。では、システムエンジニア自身にとってはどうでしょうか?以下のような事柄が考えられるのではないでしょうか?
ネガティブ面:開発案件が多いのにかかわらず優秀なSEが不足するため、開発の遅れなどが頻発して、労働環境が悪化する。システムエンジニアの高年齢化。オフショア開発が今以上に活発化し、開発自体が海外に流出。
ポジティブ面:(特に優秀な)システムエンジニアにとっては売り手市場。報酬も上昇する。
システムエンジニア不足を解消するには
今後システムエンジニア不足を解決するには、やはり若い人達にとって魅力的な職業とする必要がありそうです。しかしながら、一般の人達にとってシステムエンジニアは明らかにブラックな職業というイメージが強いようです。これは、システムエンジニア自身がSNS等で不満をぶちまけていた結果かもしれません。実際にブラックな現場があることは事実ですが、今後は現役システムエンジニア自身がよりよい労働環境になるような努力が必要なのかもしれません。
参照:エンジニアのニュース情報収集術について解説した記事はこちら
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