新人のシステムエンジニアには研修がつきものです。大学や専門学校で学んでいるとはいっても企業ごとに必要な知識は異なりますし、レベルも人それぞれです。中には知識がほぼない方もいます。新人のレベルをある程度一定の水準にするためにも研修は重要な意味を持っています。それでは、どういった研修が新人システムエンジニアに効果的なのでしょうか?
この記事では、
- これから研修を控えている新人システムエンジニアの方
- 新人システムエンジニアにどんな研修をしようかと考えている研修担当者の方
のために、新人システムエンジニア研修の良い例・悪い例を研修目的別にお伝えします。研修のやり方を間違えてしまうと、せっかくの貴重な時間をムダにしてしまうばかりか、今後の業務もうまくいかなくなってしまいます。研修担当の方は、ぜひこの記事を参考にして有意義な新人研修を企画してください。また新人システムエンジニアの方は、自分がどういった研修を受けることになるのか把握して心の準備をしておきましょう。
参照:エンジニアの採用面接で知っておきたいことについて解説した記事はこちら
各プログラミング言語の基礎研修
システムエンジニアであれば、業務で使用する言語の基礎知識はベースとして持っておく必要があります。まずはJavaやPHP、C#など多くの現場で使われているプログラミング言語の基礎を学びましょう。基礎研修は対象の言語を知らない方のためでもありますし、すでに知っていて復習したい方のためにもなります。応用の部分については、実際のプロジェクトなどでOJTを通して徐々に覚えていくことになるでしょう。
良い例
プログラミングを学ぶためには、かならずコードを自分の手で入力する必要があります。そうでなければ、まずプログラミング能力が身につくことはありません。そのためには、新人システムエンジニアにノートパソコンなどを支給し、各自でプログラミングの入力を行ってもらいましょう。その際、研修用のテキストにそって、解説を入れつつ問題を解いていく形がベターです。また、質問の時間を必ず設けて新人システムエンジニアの疑問にはその場で答えるようにしましょう。わからない部分がそのままだと、それ以降の部分もよくわからなくなっていきます。不明点や疑問点はすぐに解決することが大切です。なお、すでに基礎知識を習得済みの方は、基礎的な内容の研修だけでは退屈な思いをします。そのような方向けには、応用問題を用意しておくとよいでしょう。
悪い例
上の例と対極な例ですが、単に講師がホワイトボードの前で延々とと解説しているだけでは理解も進みませんし、眠くなってしまいます。また、研修用のテキストをあまり難しくするのもよくありません。テキストは言語の初心者でも取り組みやすいように、基礎的な内容で構成するべきでしょう。
模擬プロジェクト研修
短期間で終了する模擬プロジェクトを通して、実際のシステムエンジニアの仕事の流れを学ぶ研修です。新人のシステムエンジニアには新卒で実務経験がない方が多く、実際のシステムエンジニアの仕事の流れがどのようなものなのかイメージできていないでしょう。そのため、クライアントの要望の聞き出しからシステムの設計、構築、テスト、納品までを一貫して体験できる研修が必要です。ただし、企業によってもプロジェクトの流れは変わってくるでしょう。一連の流れを体験しておくことで、本番のプロジェクトをよりスムーズに進めることができます。
良い例
今までに実際に行ったプロジェクトの中から、機能の一部分を抜き出して研修用に単純化するなどした短期間の模擬プロジェクトを用いるとよいでしょう。その方が、実際の仕事に近いプロジェクトが体験できます。また、模擬プロジェクトは複数人のチームで行います。実際のプロジェクトはひとりで行うことはほとんどありませんし、同期とのコミュニケーションも図れるため一石二鳥です。
悪い例
模擬プロジェクトのために用意したような現実味のない内容にはしないようにしましょう。仕事の流れは多少つかめるかもしれませんが、無味乾燥なプロジェクトではやる気が起こりません。また、ひとりで黙々と行わせるのも厳禁です。プロジェクトで重要な、チーム内でのコミュニケーションもぜひ学んでもらいましょう。
ビジネスマナー研修
システムエンジニアはクライアントと多く関わる仕事ですから、特にビジネスマナーが重要です。身だしなみからクライアント先での作法、名刺交換のしかたや電話・メール対応などビジネスマンとしての最低限のマナーを身につけておく必要があります。ビジネスマナーが身についていなければ、会社の信用にも関わります。いい加減な企業だと思われないためにも、ビジネスマナー研修はしっかりとプログラムに盛り込むべきです。
良い例
研修は実演や実技を交えて進行していきましょう。お辞儀のしかたや名刺交換のしかたなどは体で覚えるものです。同僚とペアを組んで行えば、親交も深められるでしょう。また、電話対応やメール対応においても講師がクライアント役を務めるなどして実際に行ってみるべきです。
悪い例
単にテキストを読みながら、口頭での説明だけで終えてしまうのは悪い例です。最低でも、講師が実演しなければまったく伝わりません。電話対応、メール対応においてもテキストを読んで終わりというのはNGです。実際に自分で話してみたり書いたりしなければ、決して身につきません。
コミュニケーション研修
システムエンジニアには、クライアントやチームメンバーと円滑にコミュニケーションを図るためのスキルが要求されます。つまり、「聞く力」「伝える力」が必要です。また、ドキュメント等の資料を作成する機会も多いことから「書く力」「読む力」も必要です。学生時代は受け身での授業が多いため、どうしても受動的になってしまいます。研修で、能動的なコミュニケーションをしっかりと身につけられるようにしましょう。
良い例
実際に扱ったことのあるプロジェクトを元に、複数人のグループでコミュニケーションを取りながら実技指導(ロールプレイング)を行います。また、提案書や仕様書などのドキュメントを実際に作成します。実地に基づいた研修を行うことで、仕事の具体的なイメージがわきやすくなるでしょう。
悪い例
コミュニケーション能力は、実際にやってみなければ絶対に身につきません。口頭だけ、テキストだけで済ませてしまうのは悪い例です。知識だけがあっても、「声が小さい」「話す速度が早すぎる」といったことは実際にやってみなければわからないものです。かならず実技を交えた研修を行いましょう。
ソリューション営業スキル研修
上流工程を担当することが多いシステムエンジニアは、クライアントにソリューション(問題解決方法)を提案して、クライアントが求めるシステムを設計しなければいけません。経験を積んだシステムエンジニアはよくご存知でしょうが、クライアントは自分がほしいシステムをよくわかっていませんし、最善の機能を思いつくわけではありません。システムエンジニアがクライアントの要求や要望をしっかりと聞き出し、最適なシステムを提案する必要があります。この過程を学ぶのが、ソリューション営業スキル研修です。
良い例
講師がクライアント役となり、新人システムエンジニアの相手をしましょう。ただし、講師は実際のクライアントのようにシステムをあまり理解していないような回答をするべきです。また、講師はなるべくリアルな返答を心がけましょう。
悪い例
悪い例は、そもそもこういった研修を行わないことです。技術面を重視しすぎるあまり、コミュニケーション面がおろそかになってしまうこともあります。システムエンジニアは、技術だけではなく対人スキルがなければ成り立たない仕事なのでしっかりと研修を行いましょう。
まとめ
新人システムエンジニアにはどんな研修が有効かお分かりになりましたか?研修担当の方は、ここで挙げた悪い例にならないように、良い研修を実施していきましょう。ちなみに研修後には、受講者へアンケートを行うことをおすすめします。フィードバックを得て、次回の研修に向けた改善点などを把握することができるからです。新人の方は、ただ受け身で研修を聞くのではなく、積極的に学ぼうとする姿勢が大切です。研修を通して得た知識は、今後の仕事に必ず役に立つでしょう。もちろん、研修が終わっても独学での勉強は欠かせません。
参照:エンジニアの採用面接で知っておきたいことについて解説した記事はこちら
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