今回の特集では、クラウドワークス テックのユーザーを経て自ら開発側にも回ったフリーランスのエンジニアの鈴木さんと、クラウドワークス テック開発責任者・大浦との対談をお届けします。二度のフリーランスや、イギリスでの就労経験など独自のキャリアを歩んできた鈴木さんと、海外の労働文化、クラウドワークス テックユーザーとしての想い、これからの日本の働き方など、多岐に渡るトピックについて語りました。新たな発見に満ちた対談をどうぞご覧ください。
鈴木 達矢さん/38歳 バックエンドエンジニア ※写真右
8年近いRuby on Railsでの開発経験を活かし2018年1月~3月にクラウドワークス テックに業務委託として参画。主に仕事の検索機能(検索エンジン)の開発に従事。クラウドワークス テック参画以前は、レシピのコミュニティサイトを運営する会社で正社員として、ユーザーインタビューや日々の利用データを基にしながら、アプリの機能開発をクライアント側(Swift)、バックエンド側(Ruby)ともに担当していた。イギリスに3年間滞在した経験があり、2018年5月〜イギリスに本社を置く外資系企業で仕事をする予定。また現在、エンジニア向けの英語の学習本を執筆中。
大浦聖仕/38歳 クラウドワークス テック開発責任者・マネージャー ※写真左
2014年11月クラウドワークス入社。クラウドワークス入社以前は、公共系のSE(国民年金システム、保健師や予防接種など)、比較サイトの開発・運用などを経験。クラウドワークスでは、クラウドワーカーへの一括スカウト機能の開発、マーケティングオートメーションツールの導入、請求管理システムの開発など、プロジェクトマネジメントを中心に多岐に渡る業務に従事。ユーザーに価値があることは何なのかに耳を傾け、試行錯誤している。自身も週2日はリモートワークを行うなど自由な働き方を実践中。
会社員とフリーランスの二元論を越えて
大浦 たしか鈴木さんって元々デザイナー志望だったんですよね?
鈴木 そうなんです。ただ、新卒で入社したSIer(システムインテグレータ)の会社で、「デザイナー志望です」と言ったら、当時の社長から「若い内に自分で選択肢を狭めたらダメだ!」と言われて。開発部門に配属されて、そのままエンジニアになりました。結果的にエンジニアに選択肢が狭められたという(笑)。
大浦 そうなんですね(笑)。新卒で入った会社には何年くらい在籍していたんですか?
鈴木 2年半ですね。その後に一度フリーランスを経験し、27歳から、語学留学とワーキングホリデーでイギリスに3年間ほど滞在。帰国後にレシピのコミュニティサイト運営会社でエンジニアとして働いた後、またフリーランスとして働いています。
大浦 フリーランスと会社員を行き来されていたんですね。
鈴木 そうですね。自分の中で、フリーランスか、会社員かって契約形態にそれほどこだわりはなくて。その時々の自分のライフスタイルやキャリアプランに応じて、最適な働き方を選択しています。
大浦 ちなみにフリーランスとして働いていたときの1日の過ごし方を教えてもらってもいいですか?
鈴木 クライアント先に常駐するときには、正社員と同じように、朝に会社に出社して、メールチェック、コーディングして、夜退社という流れです。週に何日かはリモートワークの日があるんですけど、その日は近所のカフェやコワーキングスペースで作業しています。そういえば大浦さんもリモートワークを取り入れていますよね。
大浦 僕の場合は、週に2日リモートワークの日があります。出勤日は部下の相談に乗ったり、指示を出したりするマネージメント業務、リモートワーク時は個人の作業日。物理的に業務を切り分けられるのでメリハリがつきますね。
鈴木 大浦さんのようなプレイングマネージャーだと、作業時間の確保は大変そうですね(笑)。
大浦 そうですね……1人で集中できる時間は貴重です(笑)。ちなみに鈴木さんはプライベートとの両立という面ではいかがですか。
鈴木 今は2歳と0歳の子どもがいるので、子どもに費やす時間は多いです。子ども半分、仕事や趣味など自分の時間半分というバランスですかね。自宅で作業しているときは、子どもが外から帰ってきた瞬間に仕事モードから家族モードに切り替えざるを得ないです。
フリーランスとしての経験がキャリアに与える影響
大浦 今、世の中でフリーランスの自由な働き方が注目されてきていると思いますが、一方で、自分で仕事を獲得しなければいけない、難しい側面もあるのかなと感じています。その点については、鈴木さんはどう考えていますか?
鈴木 僕のようなエンジニアの場合、営業活動も含めて全て自律的に動かなければいけないというわけでもないんですよ。今はクラウドワークス テックさんのような、仕事を紹介してくれるサービスも多いので。だから、仕事がなくなって行き詰まる不安はそれ程感じていないですよね。僕自身はエンジニア業務に集中できています。
大浦 職種や業界による特徴もあるんですかね。
鈴木 たしかにエンジニアは基本的にプロジェクト単位での仕事がベースなので、フリーランスとして身動きが取りやすいのかもしれませんね。あと、いろいろな会社のいろいろなプロジェクトを経験できることはエンジニアとして働く上でとても大切だと思います。一社の中で一つのプロジェクトに関わり続けるよりも、広い視野と技術トレンドを獲得しやすい。つまり、多様性の中で自分のキャリアの価値が高まっていくという側面がありますね。
大浦 逆にフリーランスとして感じているデメリットはありますか?
鈴木 自分にフィードバックをくれる上司やメンバーがいなかったり、上位レイヤーの意思決定者と接する機会も限られたりといったことですかね。組織に所属しないと得られない経験値も少なからずあると思います。手取りは上がりますが、代わりに技術面以外のスキルアップ、昇給の機会が止まるので自分のライフステージに応じて上手く働き方を切り替えるのが良いと思います。
フリーランスワーカーとクラウドワークス テックの信頼関係
大浦 ちなみに、クラウドワークス テックに登録したきっかけは何だったんですか?
鈴木 前職を退職した当初、僕はフルリモートでの勤務を希望していたんです。でも、その条件でアプローチした会社は、どこも社内の規則的に受け入れられないと言われてしまって。そこで、いくつかの求人紹介サービスに登録。その中でもクラウドワークス テックさんは自分の志向性やキャリアを親身に考えた上で仕事を紹介してくれたんです。「ここなら安心できる」と思ってお願いすることにしました。
大浦 鈴木さんは、案件が始まる前にわざわざ要件の事前ヒアリングのために来社してくれたことがありましたよね。「責任感がある方だな」とこちらも安心感がありました。
鈴木 詳細がわからない中で、仕事を引き受けるのが嫌だったんですよね。ちょうど前職の有休消化中だったので、時間もありましたし、初日に自分が何をすべきかくらいは把握しておこうと思って。
大浦 実際業務が始まってからも、自分から積極的にメンバーに働きかけてくれたり、最終日に社内SNSで長文のメッセージを残してくれたり……その当事者意識は本当に刺激になりました。そのメッセージは社内でも随分話題になっていましたよ。
鈴木 そうなんですか!いや、クラウドワークスっていい会社だなと思っていたので……(笑)。
イギリスと日本……働き方のギャップ
大浦 これからまたイギリスで活動されるとのことですが、ビジネスフィールドとしてのイギリスの魅力はどういったところなんでしょうか。
鈴木 まず、毎週月曜に会社に行くのが楽しくてびっくりしましたね。日本のように細かく社内調整したり、やたらとクレームを回避する安全策を練るために時間を使ったり……仕事に付随する余計な業務がなく、本質的な仕事だけに集中できました。また、日本だと、自社内やクライアント内……どの単位でも村をつくる傾向がありますが、イギリスの企業で勤務していたときには、クライアントのスタッフが「一緒にがんばっていこうぜ」と言ってくれたんです。社外の人間でも同じ目的を共有した仲間として迎え入れてくれているようで嬉しかったですね。
大浦 今、働く環境や生産性は日本でも話題になっていますよね。
鈴木 そうですね。日本に帰ってきてびっくりしたのが、アンガーコントロールができない人が出世してしまって、人間としての一線を超えて、なんでも部下に言えてしまうこと。最近、過労による悲しい事件や事故が明るみに出始めましたが、そこで問題視されているのは、長時間労働のことばかり。もう一方の、事件や事故の根本にあるはずの人権についてはあまり語られていない気がします。
大浦 たしかに、働き方の話題になると残業時間などにフォーカスされがちなようにも思います。
鈴木 日本に帰国してから「責任」の捉え方が違うなと思いました。日本で働いていたとき、あるチームメンバーがランチを長く取ったことに対して、同じチームのメンバーがやたらと怒ったということがあります。社会人である以上モラルを持って働くべきだとは思いますが、たった一度、ランチが長引いただけでその人に直接的な実害があるわけではないじゃないですか。だから、本当は怒る理由がないはず。「なんで怒っているのだろう」と疑問に思ってよくよく観察してみると、どうやら「同じチームメンバーとして自分が上司から監督責任を問われて、迷惑を被るかもしれない」と主張しているように感じました。でも、同じ構造の問題は日本社会のいろいろな場面で見かけるなと思っていて。電車で騒ぐ子どもにやたらときつくあたる親や、電車が遅延するとここぞとばかりに駅員を糾弾する人……どれも「誰かに怒られるから」という理由で、別の誰かを攻めるという構造なんですよね。そもそも社会が寛容であれば、怒る理由は見当たらないし、他の個人の失敗や逸脱が自分の責任であるかのように感じる必要も無い気がします。
大浦 逆に鈴木さんが見たイギリスには、どんな文化がありましたか。
鈴木 チームに休日勤務をお願いしてきたCEOに対して、CTOが「それはフェアじゃない」と断ったり、プロジェクトの途中でキーパーソンが長期休暇を取ったり……個人の自由を最大限尊重してくれる文化がありましたね。それに、業務中の音楽鑑賞を禁止するどころか、ウーハーと言われる低音再生のスピーカーがオフィスの中心にあって、時々窓が揺れるくらいの音量でドラムンベースやテックハウスがかかっていることも(笑)。私が社外活動として、定期的にクラブでDJをすることになったときに、恐る恐る上司に告白したらむしろ褒められることもありました。そもそも、遊びや休暇を楽しむことが当たり前の体験として、一般的に共有されているんです。だから、個々人のプライベートや趣味をありのままに尊重する。「あの人は、こんな趣味を持っているからこんな人物に違いない」といった類の安易な先入観やレッテル張りはがそもそも起こらないようでした。
大浦 なんだかとても働きやすそうな雰囲気ですね。
鈴木 はい。日本では「この立場ではそんなこと言う資格がない」「このタイミングでこんなこと言うべきではない」と考える傾向がありますよね。でも、CTOがCEOのお願いを断ったり、キーパーソンがプロジェクトの繁忙期で休暇を取ったり……イギリスでは組織のどのレイヤーの人もゼロベースで自由に発言できるという文化がありました。
大浦 日本とイギリスではそんなに考え方が違うんだ……。
鈴木 私が住んでいたロンドンはニューヨークと同等か、それ以上の人種が集まっているコスモポリスでした。その街に集ういろいろな国の人と働いて得た経験からすると、大前提としてイギリスが独特というわけではなく、逆に日本を始め、極東の職場文化そのものが独特なのだと感じています。
変わりつつある日本の労働文化
大浦 最近、「働き方改革」と言われるように日本の労働環境も見直されつつありますが、イギリスのような労働文化に変わっていけそうだと思いますか。
鈴木 日本もトップダウンで良くなっている兆しは感じます。しかしまだ課題もあるのではないでしょうか。帰国して驚いたことの一つは、日本では同僚や顧客の一言で、本来プライベートに使うはずだった時間を簡単に奪えてしまうということ。特に、本当に望んで残業しているとは思えない、いつもつらそうな表情の人たちでも、いざ働き方に話が及ぶと、責任や情熱という理論のもと、残業を肯定してしまうことがあるんですよね。これではボトムアップで残業を避けようという話には至らないだろうなと当時は思いました。もしも「お金」に関する不安から解き放たれたとしても、その仕事を望んでやりたいというのであれば、プライベートな時間を充ててやることに関しては良いのではないでしょうか。
大浦 今の日本の働き方についてはマインド面に課題がありそうですね。
鈴木 働く時間を減らせばその分だけ単純にGDPが下がりますよね。だから労働時間を減らす代わりに労働効率を上げるという議論がありますが、IT業界では新しい管理工学を取り入れることで仕事の効率は既にかなり高くなってきていると思います。しかし、それだけでは限界があります。自分の成果だけを考えるような自分勝手な顧客や上司にノーということや、インシデントやクレームを避けるために費やされる仕事の量を相対的に下げることによって得られる効果に関してはあまり公に議論されていない気がしますね。
大浦 たしかにそうした広い視野での議論は少ないように感じます。
鈴木 イギリスではこのような違いのもと、みんな仕事には情熱を持って取り組んでいました。こういうロールモデルを一度見てしまうと、「良いものをつくるためには我慢は仕方ない」とされている日本のさまざまな前提は本当に必要なのかなと思うようになりました。こうした違和感に目を背けず、同じ価値観を持った人同士で集まって、小さくてもブレークスルーを起こし、ジワジワと世の中に広まって、働き方や価値観に多様性が生まれればいいなとは思います。
大浦 イギリスから帰国してしばらく経ちますが、日本社会の変化を感じることはありますか?
鈴木 ありますね。ここ、7〜8年くらいで大きく変わったんじゃないでしょうか。イギリスから帰国したのが今だったら移住したいと思っていたかどうかわかりません。
大浦 確かに7〜8年前は、リモートワークやフリーランスなどの議論はまだまだ少なかったかもしれませんね。まだ世の中が新しい働き方を受け止められていなかったのか……。
鈴木 今までは性悪説でルールが設けられていたと思うんですよ。「遅刻してはいけない」「サボってはいけない」……など。でも、リモートワークやフレックスタイムなど徐々に性善説に依ったルールに日本も変わってきているように思います。だからこそフリーランスワーカーは、性善説での仕組みが続けられるように、きちんと自分を律さないといけないとは思いますが。
大浦 たしかにクラウドワークス テックでも「リモートワーク可」の案件は増えてきていますね。
鈴木 IT業界では優秀な人材を確保することがプロジェクト成功の重要なカギになってきます。最近は資金を調達するための投資のエコシステムが確立してきたことや、居場所不問のコミュニケーションを円滑にするグループウェアが充実してきました。こうした背景から、「常駐できるかどうか」よりも「優秀かどうか」の方がより重要な価値基準となり、地方で働く優れたエンジニアをスタートアップ企業が採用する事例も増えていますよね。
大浦 マッチングの観点で言うと、まだ実績が乏しくて依頼が少ないフリーランスワーカーにとっては今の状況はチャンスかもしれないですね。全て手探りでプロジェクトを始める企業にとってみれば、たとえ実績は少ないエンジニアでも貴重な人材には違いないので。駆け出しのフリーランスワーカーは、その職場でまずスキルと実績を積めば次にステップアップもできますし、お互いにとってWin-Winになりやすいと思います。
鈴木 確かにそうかもしれないですね。
ライフスタイルに合わせて柔軟に働き方を組み替えていく
大浦 最後に読者のフリーランスワーカーに向けて一言お願いします。
鈴木 僕のようなエンジニアの場合、技術トレンドを刷新し続けることが最も大切。そのためにいろいろな会社、プロジェクトを体験できるフリーランスの働き方はメリットを感じます。とはいえ、これからの時代、あまり「フリーランスor会社員」のように、二者択一で考える必要もないのかなとも思っていて。その時々のライフプランに合わせて自由に働き方を組み替えていく人が増えて、働き方に多様性が生まれればいいなと思います。
大浦 今日はありがとうございました!
参照:開発者がフリーランスになることを決意した理由について語った記事はこちら
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