フリーランスとして働くとはいったい何なのか、会社員で働くことと何が変わり何が変わらないのか、その答えはフリーランスの数だけあり、安易に結論を導き出すのは難しいのかもしれません。
それでも、フリーランス一人ひとりの語りにじっくり耳を傾けると、様々な事情がある中でフリーランスを選択するに至った考えや行動の中に、これからフリーランスになろうと検討している方の示唆となるヒントが得られるかもしれない。その思いからフリーランスとして活躍する方にインタビューを実施しました。
今回は、UI(ユーザーインターフェイス)/ UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイナーとして数多くのキャリアを積み、クライアントからも高く評価されているフリーランスの西尾さんに詳しく聞きました。
フリーランスになったのは成り行き
フリーランスになったのは成り行きです。大手電機メーカーのUI / UXデザイナーとして働いていましたが、3年間の契約期間が終了したタイミングでフリーランスとして独立しました。そのメーカーから引き続き手伝ってくれないかとお声がけいただいたので仕事に困ることはありませんでした。
仕事の比率はクライアントからの直の依頼とフリーランスエージェント経由の半々です。UI / UXのコンサルティングの他に、UI設計や情報設計、デザインの提案や制作をしたりディレクションをしたりしています。
フリーランスとして長く働こうと計画していたわけでもないですし、やっていく自信もありませんでした。スマートフォンの普及とともに一般的になった UI / UX関連の需要が増えてきた中でなんとかやっていけた感じです。
ユーザーインターフェースのデザインがプロダクトデザインの中に存在していました
iPhoneやスマートフォンが登場する以前はあまり知られていなかったかもしれませんが、パソコンの周辺機器メーカーでプロダクトデザイナーとして働いていたときに、当時はGUI
(グラフィカルユーザインタフェース)と言われていたんですけど、ユーザーインターフェースのデザインがプロダクトデザインの中に存在していました。
今のようにインターネット上に情報がなく試行錯誤しながらデザインしていたのですが、のちに産業公共分野や業務用機器が主力の大手電機メーカーのデザイン部門でも同じ手法でデザインしていたことを知りました。
個人的にはGUIに対して特別に興味や関心があったわけでもなく、依頼があって一連のデザインプロセスの中でやっていました。
私の強みはモノとしての作り方の考えがしっかりしていること
パソコン周辺機器メーカーと電機メーカーで約7年間プロダクトデザイナーとUI/UXデザイナーとして実績を積み重ねてきたことが今の仕事に活かされています。
私の強みは、一言でいうとデザインのバックグランドを持っていて実績を積み重ねてきたこと、プロダクトデザインベースでモノとしての作り方の考えがしっかりしていることだと思います。
契約書にしっかり目を通すことはとても大切です
フリーランスとして独立して面倒なことは、会社で総務がやっていたことを自分でやらなければいけないこと。会社員時代に交通費などの経費精算の遅延でいかに総務に迷惑をかけていたのか、独立してはじめて総務のありがたみが身に沁みました。
契約関係も気を付けていて、契約書にしっかり目を通すことはとても大切です。例えば、馴染みの業者さんだと出来ないということで、UI/UXデザインを含めてお声がけいただいた案件で、開発を見据えた全体像を含めた提案を行ったら、馴染みの業者さんにその提案を丸ごと持って行って、相見積もりされたことがあります。
企画やデザインの提案段階では「タダ」だと思っている業界や企業がありますが、UI/UXデザインを含むIT業界のデザインやソフトウェア開発では、UI設計を含めた要件定義の段階で大切なノウハウが詰まっています。
私がお声がけいただく業界ではあまり聞かないですが、デザイナーを使い捨てにしている事案を見聞きしてきたので、そのような業界からはなるべく距離を置くようにしています。
孤独に耐えられることもフリーランスの資質のひとつかもしれません
孤独に耐えられることもフリーランスの資質のひとつかもしれません。
ひとりで一日中誰ともしゃべらずに黙々とデザインをやっているとやっぱり寂しいんですよ。私はジムに行ったり、友達や会社員の頃の仲間と飲みに行ったり、意識的に外に出るようにしてストレスを発散しています。
フリーランス仲間がいると、「あの業界や企業は気を付けたい」とか互いの情報交換や悩みを共有できるし、何よりも気晴らしになります。仲間がいるというのは自分を守る防御になりますね。
しがらみからは逃れられません
会社組織のしがらみから逃れたくてフリーランスになりたい人もいるかもしれませんが、フリーランスになってもしがらみから逃れることはできません。むしろ他にももっと心配事が増えるかもしれません。フリーランスは個人で企業と交渉することになるので、企業の立場のほうがどうしても強い状況になってしまう傾向があります。だからといって企業の言いなりになってもだめだし、頑なに自分のスタイルに固執し過ぎるのもよくないし、企業特有の事情を汲んでちょうどいい塩梅に着地させる交渉力やバランス感が問われるので、結局はしがらみから逃れられません。
職人堅気の人はよい営業パートナーを見つけないと難しいかもしれません。余人をもって代えがたい高い技術をもっている人で専門分野以外が苦手な方は、よい営業パートナーをもっている人であれば上手くいくと思います。そうでないと社員に戻っていくケースが多い印象があります。
敢えて自分の考えを持ち込まないようにしています
私が気を付けていることは、クライアントの目的や事情をまずは理解し、プロダクトを深く知ることです。傍から見ておかしいなと思うことは、何かそうなっている事情があるので、なぜそうなっているのかをそれとなく聞いてみます。
作業環境やツールもクライアントが使い慣れているツールもあるので 、敢えて自分の使い慣れているツールだけに固執せず柔軟に対応するようにしています。そのスタンスは会社員のときもフリーランスになっても同じで全く変えていません。むしろ、変えていないからこそ前職から仕事をもらえたのだと思います。
フリーランスになりたい人の選択肢は増えていると思います
フリーランスエージェントの存在には助かっています。私がフリーランスになった当時はデザイナーのエージェントがとても少なかった。
今はさまざまなエージェントがあるので、これからフリーランスになろうとしている人の選択肢は増えていると思います。実績や契約ノウハウもない駆け出しのときにエージェントの存在はとても心強いですね。ただし、エージェントを頼り続けるのではなく、ある時点では自分で顧客を探したり交渉する力を身に付けたほうがよいのではと思います。
自分が得意とする領域で様々なクライアントと仕事ができるのは楽しい
プロジェクト単位の魅力的な仕事の依頼をいただくこともありますが、個人で仕事を抱えているとタイミング的に空いてなくて辞退せざるを得ない場合が少なくありません。ベストメンバーがプロジェクト単位で集い、仕事を終えると後腐れなく各々の居場所に散るみたいな仕事が理想ですね。
一方で、デザインだけをやっていると単発案件で終わってしまうので、継続的に安定して収入が得られるように、運用・メンテナンスが発生するソフトウェアの開発案件を私が設立した会社で引き受けるようになりました。
フリーランスになって1社で週5日勤務だと会社員時代と変わりません。週5日勤務を前提にしない柔軟な働き方ができるのがフリーランスのメリットだと思います。自分が得意とする領域で様々なクライアントと仕事ができるのは楽しいですね。
時代に応じて形を変えているだけで本質は変わりません
幼い頃は普通に絵を描くのが上手い少年でした。
絵を描くのが好きで、美大受験を意識したときに技量をより上げていった感じです。美大生時代はプロダクトデザインを専攻し、交換授業で受けた金属工芸に興味を持ち、そこで学んだ技能で職人をやっていたこともありました。その過程でトレンドに左右されない長く残り続けるものづくりの意識が芽生えたのかもしれません。
私が今まで手掛けてきたデザインは、時代に応じてモノのデザインからITのデザインへとアウトプットの形態を変えているだけで、デザインと向き合うスタンスは全く変わりません。
参照:フリーランスになることを決意した方の心境についてインタビュー記事はこちら
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