サラリーマンの方は税務処理は会社が行うため、あまり確定申告について考えてこなかったかもしれません。しかし、フリーランスになると、一定以上の収入がある場合、自分で確定申告をしなければなりません。
もし、確定申告が必要なのにやらないでいると、税務署の調査が入って罰則を受けます。そうならないためにも、確定申告の知識をしっかりと身につけましょう。
この記事では、これからフリーランスを始めようと思っている方・始めたばかりで確定申告がまだの方のために「どれぐらい収入があると確定申告をしなければならないのか?」そのボーダーラインと計算方法を詳しく説明します。
そもそも確定申告ってなに?
確定申告は、1年間の所得金額を確定させ、所得税を納める手続きです。
また、住民税や事業税、国民健康保険料など所得金額に対して算出される各種金額を算出するための基礎になるので、間違いのないように申告しなければいけません。
サラリーマンの方は、あらかじめ給与から所得税(源泉所得税)を差し引く源泉徴収を行い、年末調整で正しく計算し直し、その年の所得税額を確定させます。源泉徴収で税金を払い過すぎていた場合には、還付される仕組みです。
フリーランスの方は、業種によって源泉徴収されるケースと、そうでないケースがあります。また、年末調整の仕組みもないため、翌年に確定申告を行って前年の所得金額を確定させ、所得税を納めることになります。
確定申告には、白色申告と青色申告の2種類があります。白色申告のほうが簡単ですが、収入が多い場合は、控除額が大きな青色申告にしたほうが節税できます。
なお、青色申告をするには申請が必要です。開業日から2ヶ月以内に申請しなければ、その年の確定申告を青色申告で行うことはできないので、注意しましょう。
フリーランスなら確定申告を絶対にしないといけないの?
確定申告は、「フリーランスの方ならば絶対にしないといけない」というわけではなく、収入が一定金額に満たない場合には申告の必要はありません。
そのボーダーラインは、どういった働き方をしているかなどで変わってきますので、次項でパターン別に詳しく説明します。
なお、確定申告の必要がない場合でも、別途住民税の申告が必要になることもあります。気をつけてください。
参照:厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」
【専業・副業別】確定申告のボーダーラインと計算方法
それでは、働き方のパターン別にボーダーラインや計算方法、注意点を説明します。
自分に当てはまるパターンで、ボーダーラインを超えていないか計算してみましょう。
専業のフリーランス(個人事業主)
専業としてフリーランスをしている方の場合です。これは、個人事業開業の届け出をしているかどうかとは関係がありません。
専業である、つまり事業収入のみで給与収入がないかどうかが重要になってきます。給与収入がない主婦や学生の方もこちらに該当します。
ボーダーライン
フリーランス専業の場合は、明確なボーダーラインがあるわけではなく、人によって変わってきます。所得から所得税を計算し、納める税金が0円なら確定申告は不要です。具体的な計算方法を次に説明します。
計算方法
はじめに、前年(1月1日~12月31日)の売上(収入)を合計します。ここでは、合計350万円の売上があったとしましょう。
売上:350万円
次に、売上から経費(事業を行うためにかかった費用)を差し引いて所得金額を求めます。ここでは、50万円の経費がかかったとします。
売上:350万円 - 経費:50万円 = 所得金額:300万円
次に、所得金額から所得控除を差し引いて、税金の算出に用いる課税所得金額を求めます。所得控除とは、条件に該当する方が、所得から一定金額を控除できる制度です。所得控除には、社会保険料控除などたくさんの種類がありますが、ここでは、簡単に計算するために、全員が受けられる基礎控除の48万円のみを適用します。
所得金額:300万円 - 所得控除:48万円 = 課税所得額:252万円
次に、課税所得額をもとに所得税率を調べ、所得税額を求めます。所得税率は、、所得金額の区分ごとに段階的に税率が上がる超過累進税率です。区分ごとの計算は手間がかかるので、国税庁の速算表を用いて計算しましょう。
課税される所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
1,000円~194万円9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円~694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
所得税額は、以下の式で計算します。
所得税額=課税所得額×所得税率-控除額
ここでは、課税所得金額が252万円なので、所得税率は10%です。所得税額は252万円×10%-9万7,500円で、15万4,500円になります。
なお、所得税には、税額から直接差し引く住宅借入金等特別控除などの税額控除の制度もあります。税額控除がある場合には、算出した所得税額から差し引きます。税額控除を差し引いたあとの所得税額を、基準所得税額と言います。
平成25年以降は基準所得税額の2.1%(3,244円)が復興所得税として課せられます。そのため、最終的に納める税金は、所得税と復興特別所得税合わせて15万7,700円(100円未満切り捨て)となります。
注意点
確定申告を行わない場合でも、会計帳簿や経費の領収書などの会計書類は保存しておく必要があります。これは、万が一税務調査が入った時に、正当な金額だったと証明するためです。特に白色申告の方は、証拠がない場合、税務署で推計を行って課税されてしまうのでくれぐれも注意しましょう。
副業のフリーランス
サラリーマンやパート、アルバイトなどで給与収入を受けながら、副業でフリーランスを行っている方の場合です。
ボーダーライン
副業の場合のボーダーラインは、給与以外の所得金額が20万円以下かどうかです。20万円を超える場合、確定申告をする必要があります。これは、あくまで所得金額なので売上(収入)から経費を差し引いた金額になります。
計算方法
売上が23万円で、経費に5万円かかった場合
売上:23万円 - 経費:5万円 = 所得金額:18万円
上記の例の場合、20万円以下になるため確定申告を行う必要はありません。
注意点
企業によっては就業規則で副業を禁止していることもあります。確定申告によって会社に副業が発覚する場合もあるので、注意しましょう。
なお、医療費控除など確定申告が必要な控除を受ける場合には、副業の所得が20万円以下であっても、副業分について申告しなければなりません。
確定申告をしなかったらどうなる?
それでは、確定申告が必要なのに、うっかり忘れてしまったらどうなるのでしょうか?そのまま放置していれば税務調査が入り、納めるべき税金に加えて無申告税と延滞税が課せられます。
放置している期間が長くなるほど多くの金額を払うことになるので、忘れていることに気づいたらすぐに申告しましょう。ばれないだろうと思っていても、税務署の方はさまざまな方法で証拠を得ています。必ず申告してください。
まとめ
確定申告をやったことがない方は、きっと難しいものだと思っていることでしょう。確かに、最初は誰でも初めてなのでわからないことだらけだと思います。でも、税務署に聞けば教えてもらえますし、確定申告のための書籍もたくさんあります。
1年目さえ乗り越えれば、2年目はまた同じようにやれば良いだけなので、がんばってみましょう。まずは自分が確定申告をしなければならないのか、しっかりと確認しておいてください。
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