アディッシュ株式会社

取締役・プロダクトマネージャー
池谷 昌大 さま

フリーランスは、内輪に染まらぬ“素朴”な視点でメンバーに気付きを促す伴走者

会社組織で働いていると、その組織にしか通用しない独自のルールに縛られ、既存事業の拡張や、新規事業創出の芽を無意識的に摘んでしまっていることがあります。
アディッシュ株式会社の取締役・プロダクトマネージャーの池谷昌大さまは、その問題を意識的に解決する環境作りに注力し、現在は部門を越えて全社的に「新たなアイデアを素早く形にできる組織」の仕組み作りにチャレンジしています。
フリーランスのUI/UXデザイナーに週1回のデザイン・レビューを依頼したことにより、チームメンバーや組織にどのような気付きを与え、変化をもたらしたのか、その変遷やフリーランス活用の今後の課題や可能性について池谷さまに詳しく聞きました。

お話を伺った方:

取締役・プロダクトマネージャー 池谷 昌大 さま

2000年よりソニー系半導体商社、海外半導体商社、外資系半導体メーカーを経て、2009年に株式会社ガイアックスに入社。企業向けSNSモニタリング事業、カスタマーサポート事業の営業及びサービス構築を担当。2014年、アディッシュ株式会社取締役に就任。

デザインで詰まったときに、適切なレビューをしてくれる人の必要性を感じていました

フリーランスを活用する前に困っていたことは何ですか?

アディッシュのメイン事業は投稿モニタリング、ネットいじめ対策、ソーシャルアプリのカスタマーサポート、SNS運用などのオペレーションを提供するサービスになりますが、当時、私はカスタマー対応や社内ヘルプデスクの効率化を支援する目的で作られた、チャットボットツール「hitobo」のプロダクト・オーナーをしていました。

メイン事業のオペレーション・サービスはデザインが軽視されがちで、UIは「操作できれば最悪は良い」となりがちでしたが、チャットボットはB to B向けとはいえSaaS型のプロダクトのため、使い勝手のよさもサービスの優位性に強くかかわってきます。

当時はエンジニアが”いい感じ”にやっていましたが(笑)、やっていくうちにデザインで詰まることが増えてきたのです。
その時、デザインに興味をもっているエンジニアがいて、デザインに集中したいという申し出があり、デザイナーに転向してもらいました。

エンジニアからデザイナーに転向ですか!

はい。そのエンジニアはiOSのアプリを作りたいという志向があり、趣味でアプリを作っていく過程でUIデザインに興味を持ち、「デザインスキルはiOSアプリの開発にも役立つ」との思いからデザイナーとして足を踏み入れてみたいと思っていたようです。
チームがデザインで困っているという事情とリンクして、自分がデザインをやってみようという思いが強くなったみたいですね。
中途半端に色々とやるよりは専念したほうがスキルアップにつながると考えたため、本人とチームで話して、デザイナーに専念することに決めました。

とはいえ、デザイナーの経験値がまだまだ少ないので、目指しているユーザー体験に対して、それを実現するためのデザイン案でデザイナー本人やチーム全体が詰まってしまったときに、具体的に解決するためのアイデアの引き出しが少なく、適切なレビューをしてくれる人の必要性を感じていました。

ただ、デザイン・レビューだけをする人を1人分専任で依頼することは、依頼された人の仕事のやりがい面でも、コスト面でも、妥当性が低いと考えていたので困っていました。

いい人がいれば、という軽い気持ちでフリーランスの紹介を依頼しました

どのように解決しようとしましたか?

エンジニアも私も、外のミートアップなどのコミュニティでデザイナーの方とつながりがあったので、参加者の方に副業でお願いできないかお声がけをしようとしましたが、お願いするにもその方の得意分野がわからないので気軽にお声がけできませんでした。

何人かに雑談レベルでは話はしましたが、具体的に依頼する話には至りませんでした。

池谷さんはミートアップイベントによく参加するのですか?

はい。プロダクトマネージャーは、深く知っている分野を増やすほど、その知識や視点はそのまま業務にも役立つので、UXデザイン、カスタマーサクセス、プロダクトマネージャーの会にはよく参加しています。
書籍だけでは得られない他社の成功談や失敗談をそこに至った過程の話とともに聞けるので、自社にあてはめた場合に活かせることはないか、常にアンテナを張って意識的に参加するようにしています。

ミートアップイベントに参加している中で、同じイベントに参加していたクラウドワークスの社員の方からフリーランスエージェント「クラウドテック」の紹介を受けたのがきっかけです。
いい方がいれば、という軽い気持ちで紹介を依頼したところ、西尾さんという弊社が求めていたスキルを持っていらっしゃったフリーランスのUI/UXデザイナーをご紹介いただきました。

フリーランスを活用することに戸惑いはありませんでしたか?

ありませんでした。

正社員採用の場合は、実際に一緒に働いてみてからお互いのマッチングの良さを確かめることはなかなか困難ですが、フリーランスの場合は期間を区切れるので、依頼する側もされる側も、互いにお試し期間を設けられるのが大きいですね。

内輪に染まらぬ素朴な視点でコメントを貰えることが自分たちのチームを良くするのにプラスになる

フリーランスの活用には慣れていたのですか?

いいえ。
知り合いのエンジニアに業務委託でお願いした前例はありましたが、積極的にフリーランスの活用は行っていませんでした。

プロダクトの開発の場合、社員の採用も大事ですが、外部の人材が入るおかげで、一歩引いた目線で客観的なコメントをもらえるメリットがあると思っています。
インターンを受け入れたときも、余計な前提知識のない素朴なコメントを貰えることが自分たちのチームを良くするのにプラスになると感じていたので、デザイン・レビュー担当としてフリーランスを受け入れるのははじめてでしたが、戸惑いはありませんでした。

個人が継続的に仕事がしたい、成長したいと感じるような環境を持続的に用意する

フリーランスにまるっとお願いしたほうが早かったのではないですか?

デザインをフリーランスの方にすべてお願いするよりも、一つひとつのアクションの再現性を高めていくために、組織全体のレベル感を上げ、社内のデザイナー自身のスキルを高め、組織として再現性が生まれやすいほうの選択肢を重視しました。

デザインの考え方や基礎レベルを上げ、デザイナー及び社員全体の成長を促すことができれば組織全体の成長スピードを早くできるのでは?と感じていました。

再現性が重要だと思った動機は何ですか?

これからは、個人が企業よりも強くなる時代がくると思っています。

自分が既に知っている分野や得意な分野以外のことについて困っているときに、組織内で得意な人がすぐに見つかるとか、すぐに聞ける環境があるとか、働きやすいチームであるとか、そのような環境が提供されていないと、その会社の中で仕事をするメリットがないのではと思っています。

個々人が仕事をしたい場とか、新たなことを学び、成長できるチャンスがあると感じるような環境を持続的に提供できることが、結果的に、個人としても組織全体としても高いレベルの仕事をしていく再現性を高める、という思いがあり、それこそが会社の価値だと思っています。

自分のやり方が合っているのかわからない状態だったので、とても安心した

デザイナーとフリーランスの間で普段はどんなやり取りをしていますか?

基本は週1回の1時間、西尾さん(フリーランス)から口頭でデザイン・レビューを受けています。その他、社内のデザイナーが困っていることを何でも相談にのってもらう時間にしています。

西尾さんが手書きのメモを画像にしてSlackに貼り、出席していないチームメンバーにも能動的に情報共有していただけているのでとても助かっています。

デザイン・レビューを受けて、デザイナーは成長しましたか?

はい。

何よりも、いままでデザイナーが一人でやっていて、デザイナー自身として自分のやり方が「これで合っているのか?」わからない状態だったので、とても安心したと言っていました。
エンジニアからデザイナーに転向しているので、エンジニアの気持ちがわかりすぎてしまい、 それが返って、業務を進める場面でデザイナーの立場としてどのようにふるまうのが適切かわからない場面もあったようです。

そこに西尾さんのレビューが加わったことで、まずは安心した、というのが大きかったのではないかと思います。

例えば、デザイン案に対して、デザイナー本人や他のチームメンバーが 「何か」違うと思うけれど、言語化がうまくできないときに、 西尾さんがその違和感を言語化してくれたり、代替案のアイデアを出してくれたり、デザイナーが「エンジニア目線」に寄り過ぎているときに、西尾さんが「ユーザー目線」でレビューしてくれるので、バランスが良い状態に保たれています。

一方で、安心感と同時に、社内事情や制作過程の前提情報がない立場の方からの レビューを受けることで、デザイナーやエンジニアにとってはある種の厳しさを突きつけられている場面もあると思います。
それがデザインと「より深く」向き合うきっかけとなり、結果的にユーザーに「より良い体験」を生み出すためのプロセスの改善につながっていっていると考えています。

客観的なコメントがもらえるのが一番大きい

池谷さん自身は、やりとりを見ていてどのような印象を受けましたか?

やはり、客観的なコメントがもらえるのが一番大きいですね。西尾さんは経験が豊富なので知らなかった視点を教えてもらったのも大きいです。

客観的なコメントは、その事業部の中にメンバーとして所属して細かな過程を知ってしまった立場では物理的にできません。それに加え、専門的な視点が得られるのでさらによい状況だと思っています。
ドメイン知識にどっぶりつかっていない状態で、業界の視点に偏らず、業界の慣習をあえて踏まえずに素朴な視点からの意見をもらえるのが嬉しいです。

そのような環境を組織としても意識的に作ることがのぞましいと思っています。

フリーランスも仕事の中で発見がある環境を用意したい

環境を意識的に作る上で取り組んでいることはありますか?

チャットボットのプロダクトオーナーを別の者に任せ、今は全社的に新規事業のタネの検証や、既存事業のサービス改善やサービス拡張を進めようとするオーナーを助ける方向に仕事の重心を移しました。
具体的には、「デザインスプリント」という方法論を用いて、仮説があったら1週間単位でプロトタイプまでを作りきり、検証とブラッシュアップを繰り返していく試みをしています。

また、組織全体として 継続性や再現性を大事にしているので、社員やフリーランスなどの勤務形態にかかわらず、業務に関わった全員がなるべく良い状態でいられ、成長できる環境にしたいと思っています。
社員だけではなく、フリーランスの方も仕事の中で発見がある環境を保ちたいです。
西尾さん自身も、きっと視点が増えることを楽しんでいるのではないか、と勝手に思っています (笑)。

社員、フリーランス関係なく、かかわった双方にとって発展がある環境を作りたいですね。

正解がないなかで社員と一緒に伴走してくれる存在

フリーランスの活用で今後の課題だと感じていることはありますか?

まだ、会社全体ではフリーランス活用のメリットを実感レベルまで共有しきれていません。
今後は、自分がかかわるチーム以外にも、フリーランスをはじめとする客観的な視点を取り入れることが当たり前の状態にしていきたいと思っています。

よくあるのが、社内の同じメンバーで同じ社内で仕事をしていると、今まで前提としてあったルールを変えちゃいけないと無意識的に思い込んでしまうなど、何かと縛られがちです。
既存のルールや、やり方が目的に対して一番よい選択なのか、常に素朴な視点で問い直すことを当たり前にしていきたいと思っています。
「説明しなくても分かってくれる」とか「あうんの呼吸で理解してくれる」ほうが仕事上は楽ですが、今やっていることを誰が見ても分かるように言語化し、誰がどのタイミングで参加しても理解できるように可視化を常にしていることは重要です。

意図的にそのような状態を作るには、細かな前提情報を持っていない人に意識的に参加してもらう状況をつくり、その人が入ってもコミュニケーションが成立する状態にして、会社全体をよりオープンにしていけたらよいと思っています。

組織に活を入れるには口うるさい外部の存在が必要であると?

口うるさい、というよりは社内事情に縛られない素朴なコメントなんです。
今やっていることの「そもそも論」を振り返るキッカケにできる、素朴な視点の意見はありがたいですね。

正解がない課題解決の過程で社員と一緒に伴走してくれる存在の選択肢として、フリーランス人材を今後も活用していきたいなと思っています。

※2019年8月時点のインタビューです。
COMPANY INFO
アディッシュ株式会社
インターネット/Webサービス
投稿モニタリング『インターネットモニタリング』、ネットいじめ対策『スクールガーディアン』、チャットボットツール『hitobo』など
UI/UXデザイナー
SUMMARY
フリーランスは、内輪に染まらぬ
“素朴”な視点でメンバーに気付きを促す伴走者
POINT1

内輪に染まらぬ”素朴”な視点の意見が
チームや組織を良くするのにプラスに働く

POINT2

フリーランスは正解がない課題解決の過程で
社員と一緒に伴走してくれる存在

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